「近江」を「おうみ」と読む理由

「近江」が何故「おうみ」と読めるのでしょう? また、「おうみ」を「淡海」と書くことがありますが、「近江」とはどう違うのでしょう?

実は、これらの言葉の歴史的経緯がわかれば納得できる話なのです。 その経緯とは以下のようなものです。

1. 古くは琵琶湖のことを「淡海」と書いて「あはうみ」と呼び、これが詰って発音されて「あふみ」と呼ばれるようになった。 これを現代流に発音すれば「おうみ」になる。
2. 近畿政権の勢力圏が広がるにつれ、 「もう一つの大きな淡水湖」である浜名湖が彼らの認識に入ってきた。 (浜名湖が海水湖になったのは、1498年の明応地震津波で地盤崩壊が起こって太平洋とつながってしまってから以降のことです。念のため)
3. そこで、琵琶湖を「近淡海」(ちかつあふみ)浜名湖を「遠淡海」(とほつあふみ)と呼び分けることにした。 「とほつあふみ」は後に詰まって「とほたふみ」になった。 現代流に発音すれば「とおとうみ」になる。
4. しかし、それでも単に「淡海(あふみ)」と言えば「近淡海」のことだったので、話し言葉としては「近淡海=あふみ」「遠淡海=とほたふみ」という使い分けが定着した。
5. 8世紀に入って律令制度を整備していく段階で、「国名などの地名には好字2字を用いる」ことになった。 そこで「近淡海→近江」「遠淡海→遠江」と書き換えた。 その結果、「近江=おうみ」「遠江=とおとうみ」となった。


 愚息が小学校4年生のとき、社会科の授業(県内の市町村を覚える)のために配布された資料を見ていたら、「東近み市」と書いてありました。 未習漢字を仮名書きにしたつもりなのでしょうが、「近=おう」「江=み」だと解釈してしまったんですね。 これは全くの誤解で、「近江=おうみ」で熟字訓です。 あるいは「江=おうみ」で「近」は読んでいないと考えることもできるでしょう。 「和泉(いずみ)」の「和」や「大和(やまと)」の「大」を読んでいないのと同じことで、「好字2字」にするために追加した余計な文字だとも言えるわけです。 もちろん、追加した文字の趣旨が全く違うのですが。


2000年7月29日WWW公開用初稿/2011年8月12日最終改訂

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