99博物館講座

琵琶湖博物館博物館講座


「地 層 と 火 山 灰 (全3回)」

講座の説明
 この博物館講座は,1999年の夏に毎週土曜日に開き,全部で3回の連続講座でした.初日は,地層と地質調査についてで,地層の調べ方や地層の意味などを説明しました.
 2回目は火山灰とそれを噴出する火山の話でした.
 最後は,地層のできる場所と地層の関係について(なんか変な日本語)をして,全体のまとめなどをしました.




第1回:地層ってなに?と地質調査(このページ)

第2回:火山灰と火山の話

第3回:地層の出来る場所と地層の関係



はじめに
 地層と火山灰.こんな題名はなんのことかわからないですよねぇ.だいたい地層ってなんだろう?火山灰は火山から出てくる灰だろうけど,それと地層とどう関係するのだろう?という疑問がわいてきませんか?この博物館講座ではそのあたりの疑問が解決出来るようなことをやりたいと思っています.
 地層には昔のことがいろいろと記録されています.それが昔の気候やそこにいた生物,その地層が出来た環境や地形なども...地層を詳しく調べると過去の事がいろいろと浮かび上がってきます.では,どう詳しく調べたらわかるのでしょうか?A展示室には琵琶湖の過去の環境が示されていますが,これらはどうやってわかったのでしょうか?このあたりに迫ってみたいと思います.

地層ってなに?
 みなさんは地層と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?砂とか泥?なにか縞々の模様?化石?いろんなことを思い浮かべるかもしれません.漢字から考えると,「地の層」,「地が層状になったもの」という意味ですよね.
 地学事典
「厚さに比べて水平方向の広がりの大きい層状の堆積物・堆積岩など.ある地層は上下の他の地層と区別され,水平方向にも広がりをもつものとして空間的・層位学的に定義される.日本語の地層という用語は,地層区分の単元の大小に関わらず一般に用いられる.」
とあります.なにかわかったようなわからないような...ここでも「層状」という言葉が出てきます.
 アメリカの地質学用語集
   (Glossary of Geology)
stratum(日本語の地層は,英語ではstratumとbedという2つの意味が含まれます.ここでつかう地層はstratumのほうです.ちなみにbedは「堆積物の岩相層序でもっとも小さいユニットを示す」とあります):「テーブル状またはシート状の堆積岩で,下や上にある他の地層とは別れて見えるもの」 とあるのでやはり層状の堆積物「堆積物」(砂や泥がたまる事を「堆積する」と言います.ここから「堆積したもの」を「堆積物」とよんでいます)という意味が使われています.
 そうすると,地層とは言葉通りに,層状になったものという事が言えます.このあたりの崖などに見られるものには,昔の琵琶湖が作った地層があります.この地層はA展示室でも見られます(地層を接着剤と布ではぎ取ってきたもの).しかし崖に見られる地層は縞々やいろんな模様が見られますが,層状になっていると言ってもピンときません.では地層はどうやって出来るのでしょうか?
 図は地層のでき方をイメージしたものです.これを見ると,崖に出ている縞々模様も実は面になっている事がわかると思います.この図でもう一つ重要なことは,地層は下から順番にたまっていくということです.ですから崖を見たとき,その崖の地層は下から出来たという事ですから「下の方が古い時代に出来た」ということになります.これは「下から上へ時間が流れている」という意味でもあります.これが「地層は過去を記録している」という意味なんです.地層は空間を残しはしませんが,当時の地表面を面として(ここで言う面とは,陸上でも海の底でも,湖や川の底でもかまいません.地面の面です)記録します.それが時間の経過と伴って地層を作っていきますので,地層の積み重なりが時間の経過を表していることになります.ですから,地層の面というか広がりがどのようになっているのか?と地層の積み重なり(層序といいます)がどうなっているのか?が重要なのです.地層の広がりは,地層の分布も示していますので,これは地質図に表されます.地質図は地層の積み重なりも漠然と示しています.地層の積み重なりは,どんな地層がどのように積み重なっているのかを図示した,地質柱状図というものがあります.この2つのものを説明する前に,それはどうやって調べるかを見てみましょう.


地質調査について
   地質調査の目的は,上に述べた「どのような地層(地層でなくても岩石でもよい)がどのように広がっているか?」と「どのような地層がどのようにつみかさなっているのか?」にあります.その基本になるのは,どこにどのような地層があるか?です.我々が野外で調査をするときは,たいてい崖を見て回ります.その崖にある地層が地図上のどの場所にあって,そこには何がみているか?何があるか?を調べて回るのです.崖はずっとつながっているわけではなくて,点々と存在しますが,地層はある広がりを持って,出来るはずです.図を見て下さい. 地層が出来るときはある広がりをもって出来ますが,それが崖を作る段階でいろんなところが削られて,見かけ上点々と存在しているように見えるのです.
 この図は他のことも示していて,崖を作る時に地層が傾いている様にかかれています.地層が出来る場所はたいてい水たまりなどの低い場所です.それが崖になるためには,隆起しなくてはなりません.そう言うときはたいていどこか傾くことが多いのです(水平の場合もあります).傾いていると地層の広がりを理解することは,下の左図に示されるように難しくなります.







 そこで,地層がどういう方向に傾いているのかを調べます.上の右図に地層の傾き方をどのようにして表すか?を書いています.地層の傾き方は,水平面と交差する方向(走向)と傾いている方向へ何度傾いているか(傾斜)で表します.たとえば,走向N40 E,傾斜20 Sなどのように言います.どうやって測るかは,クリノメーターというものを使います.
 クリノメーターによって,地層の広がりを予測するのですが,ちょっと感覚が数学的になるかもしれません.走向は水平面と交差した方向ですから,走向方向は同じ高さに同じ地層が出てくるはずです.あとは傾きの関係とを考えると,A展示室にある地質図の様な線が描けます.これが,ある地層(境界面)の出てくる場所(広がり)を示しています.地質図はこのようにしてかかれます.ただし,地層は数学のように完全なものでなく,もっと曖昧なので,これほどうまくはなかなかいきません.しかし,離れた崖どうしの関係(どっちが上か,下か,同じ地層か?という関係)は,だいたい理解できると思います.これは地質図(地図上の地層の広がり)を書くときにも必要ですが,地層がどのように重なっているのかを考える上でも重要です.
 甲賀地域で行われた調査の例(川邊,1981)のように,崖ごとに見られるものを簡単な図で表していきます.この各地点の図は,どのような地層がどれくらいの厚さがあるか?を示した図(柱状図)がかかれています.また,各地点の地層の関係(上下同じという関係)も示しています.この関係は現地で歩いて調べる場合もありますが,上に述べたような方法で関係を見ることもあります.たとえば,すぐ近くの崖どうしでは同じ地層が見られるかでその関係を知ることが出来ます.しかし,何mも上とか下になることが予想される関係では,数学的に求める方法が適しています.このようにして,地質図がかけるのです.地質図はふつう,横から見た断面図もかかれています.普通地層ははじめのほうでも述べましたが,横への広がりと上下への広がりがありますので,地質図のように平面的(地図上)だけではなく,断面をきるとどうなっているのか?を把握することが必要になります.そういう意味で断面図がかかれています.

火山灰はどうなったの?
 題名に出てくる火山灰は,地層とどう関係しているのだろう?と思われる方もいるかもしれません.火山灰はその名前の通り「火山の灰」です.灰といっても紙が燃えたときに出来る燃えかすのようなものとは違うので正確には「火山から出てくる灰のようなもの」でしょう.火山灰は見たことありますか?テレビでなら見たことがあるかもしれません.鹿児島の桜島が出している噴煙とか,数年前に起こった長崎県の雲仙普賢岳でも出てきていました.雲仙普賢岳は火砕流を出しましたが,火砕流の大部分は火山灰で出来ています.火山灰が火山から飛んでいく方法はいろいろあるのですが(その事については別に話をします),とにかく火山の噴火に伴って火山灰が火山から噴出されます.火山の噴火は短い時間で起こり,それが風などでとばされて,散らばります.とばされた火山灰が地上に落ちて地層として残ると,地層中の火山灰層となる訳です.これで,火山灰との関係がわかりましたか?地層が出来るのは何となく時間がかかりそうですが,火山灰は火山の噴火が短い時間で起こることを考えても,一気にたまるという印象を受けます.しかも,散らばっていろんな所にほぼ同時にたまるので,同じ火山灰はほぼ同じ時間を示していると考えても間違いではないでしょう.ここで勘のいいかたは,前の話とつながったかもしれません.
 地質調査の所で,地層が傾いていると,同じ地層かどうか?や,離れた崖にある地層の関係がわかりにくいと述べましたが,火山灰はほぼ同じ時間にたまっていると言いました.しかも,火山灰は泥や砂と違うもので出来ているので,見つけやすく,同じ火山灰かどうかを調べることが出来ます(調べ方は別に述べます).というわけで,ややこしい事を考えなくても,同じ火山灰を見つけることで,離れた崖の関係を知ることが出来るのです.川邊(1981)の図を見ると,各地点の柱状図を線でつなげています.これらの線のなかには名前がかかれているものがあります.これは火山灰層に付けられた名前です.これが火山灰層なのです.
 同じ火山灰層を見つける利点は,他にもあります.それは,地層には砂や泥や礫(石ころ)がありますが,すべての場所で同じ時に同じ地層ができるとは限りません.いまの我々の生きている環境をみても,川や湖や田畑など様々です.古琵琶湖層の時代には田畑はなかったと思いますが,そのあたりは川の周辺の湿地だったと考えられます.それらの場所では違った地層が作られます(別に話します).つまり,同じ時に砂がたまるところや泥がたまるところがあります.そうすると,地層をうまくつなげることが出来なくなってしまいます.そこで火山灰が登場します.火山灰は前に述べましたが,いろんな場所にほぼ同じ時間にたまります.ですからその場所が砂の所でも泥がたまるところでも同じ火山灰が同じ時間にたまります.そうするとどう言うことでしょうか?同じ火山灰は同じ時間を示すのですから,火山灰を見つけるとその火山灰が降った当時の環境をいろんな所でわかると,場所による同じ時間の環境の違いがわかると言うことです.それは当時の地形などの復元にもつながります.
 古琵琶湖層を見るとたくさんの火山灰層があることがわかります.火山灰層がたくさんあるという事は滋賀県の近くに火山があったということ?と思われるかもしれません.


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