このページは,琵琶湖博物館の内部向けの8回連続講座としておこなった時に作ったテキストを,web用に再構成したものです.
内部向け講座について

第7回「鉱物のいろいろ」

A展示室の場所:コレクションギャラリー、自然史研究室

図7-1 石英の結晶のイメージ.実際にこのような形態をしているわけではなく,あくまでもイメージ.

・)鉱物って?

 私たちの住んでいる場所を作っている地盤はそのほとんどが鉱物からできているというと驚かれるかもしれません。一般的には、鉱物は、宝石や、水晶など、肉眼で観察できたり、手で持ったりできるくらいの大きさを持っていて、美しいものだというイメージがあるかもしれません。新版地学事典には「自然の物質のうち、物理的・化学的にほぼ均一で一定の性質を有する無機質の固体物質をいう」とあります。何のことか理解が難しいかもしれませんが、ほぼ一定の成分から成り立つ無機質なモノと考えるといいでしょう。実際鉱物というのは、化学組成で表せます。たとえば、一般になじみ深い鉱物としては、水晶があります。水晶は鉱物名でいうと、石英ですが、石英はSiO2として表せます。珪素(Si)と酸素(O)2つからできているということです。こういった記号がでてくると、それだけで、“もう聞く耳持たない”という方もおられますが、それでもあえて続けると、物質は細かく分けていくと元素というもので構成されていて、このいくつかの元素が組合わさって物質ができています。ともかく、鉱物は、物質の最小単位の元素を組み合わせてできているのです。こういうと、すべての物質が元素からできているのだから、鉱物も元素の組み合わせでできていて当然だと思われるのですが、鉱物の場合は、いくつかの元素の組み合わせだけで表せるという事が重要なのです。つまり、水晶でいうと、水晶は珪素と2つの酸素が基本としてあって、それが一塊りとして積み木のようにつながっていると考えるとよいかもしれません(図7-1)。図7-1はあまりうまくかけていませんが、基本となる組み合わせをいくつも積み重ねて(というより基本組み合わせをさらに組み合わせて)できています。ですから、水晶をわると、形はいびつになりますが、それでも、SiO2の組み合わせでできていますし、細かく割っていってもSiO2です。このとき、図のようにきれいに組合わさっているモノを結晶といいます。鉱物はほとんどの場合この結晶でできています。

図7-2 使う積み木(原子)が同じでも,積み方(結晶構造)が違えば違った形になる.

・)結晶

 結晶は、その組合わさり方や結晶の作り方によって、それぞれの鉱物が結晶として好きな形(自形)があります。たとえば、水晶などは先の尖った六角柱の形になります。ただし、この結晶の形は、同じ成分でもいくつ違った形になるものがあります。それは、同じ成分(元素組み合わせが同じ)でも、原子の配列の仕方(結晶構造という)が違う事があるからです。たとえば、一番有名なものとして、グラファイト(炭みたいなもの)とダイヤモンドです。この二つはどちらも炭素(C)という元素からできているのですが、それらが集まったときに、つながり方、組合わさり方が違っているのです。イメージとしては、いくつかのブロックや積み木があったとします。同じブロックや積み木を使ってもいくつもの形を作ることができるようなものです(図7-2)。ただし、結晶の場合は、どのように組合わさるか(結晶構造がどのようにできるか)は、その結晶ができるときの温度や圧力の条件によって決まります。
 このように、鉱物は一定の成分から成り立つと言っても、同じ成分でも同じ鉱物になるとは限りません。成分が同じでも結晶構造が違えば違う鉱物になります。こういった成分同じで結晶構造が違うというものは、多形(たけい)とよばれます。鉱物は、成分と結晶構造で決まります。 結晶構造を見ることは難しいので、普通は偏光顕微鏡を使って、鉱物に光を通してみた時の見え方、光学的性質という、を調べます。また、大きな鉱物の場合は、その鉱物が好きな形(自形)になっていればその形で知ることができます。
 これまでに見付けられた鉱物は世界中では約4000種類ほどあると言われています。日本には、このうちの1050種類ほどがあると言われています。

図7-3 鉱物の成長イメージ.周りを覆うようにして大きくなる.

・)岩石は鉱物のあつまり

 鉱物はある成分で表すことができることから、ある成分の塊だと考えることができます。しかし、岩石はある成分だけで表すことができないモノがおおいです(チャートなどはほとんどがSiO2でできているなどの例外はある)。それは、岩石が鉱物のあつまりでできているからです。いくつもの鉱物が集まってできたモノが岩石だと言い換えてもいいかもしれません。岩石をつくる鉱物は、ある一種類の鉱物だけでできていてもかまいませんし、いくつかの種類で作られていてもかまいません。火成岩や変成岩などの大きな区分は、でき方による区分ですが、火成岩のなかの深成岩をさらに分けた、花崗岩やはんれい岩といった岩石の種類は、構成されている鉱物の種類や量でもわけられています。
 こういった岩石を構成している鉱物は、コレクションギャラリーにあるような大きな鉱物ではありません。また形も、その鉱物が好きな形(自形)になっていないものが多いです。何故そういう違いができるのでしょうか?
 A展示室入口付近にある花崗岩を例に考えましょう。花崗岩を作っている鉱物には、黒雲母や石英、長石などがあります。こういった鉱物はマグマが冷えていく過程でマグマ中でそれぞれ鉱物が作られます。そのとき、それぞれの鉱物は、鉱物を作るための成分が集まって結晶を大きくしていきます。大きくなる成り方としては、小さい鉱物の周りを取り囲むようにしてその鉱物を作る成分がくっついていくようにしておおきくなります(図7-3)。こういった大きくなる成り方が、鉱物自身があたかもぐんぐんと成長しているように感じられることから、鉱物の成長、と呼んでいます。マグマ中で鉱物が成長するとき、マグマの何処でもいろんな鉱物が成長していくので、鉱物同士が成長する時にぶつかり合ってしまって、お互いがその成長を阻むような感じになってしまいます。たとえば、小さな箱にいくつもの風船を入れてふくらましていくことを想像すると、ある程度大きくなった後は、ぶつかり合ってしまって、お互いがお互いの成長を(大きくなるのを)制限しようとしますし、普通の風船は丸い形でふくらんでいきますが、お互いにぶつかり合った風船は、丸い形になることができません。マグマ中で鉱物が成長するときもそのような事が起きてしまうので、やはり、鉱物もそれぞれの鉱物が、成長するのを阻んでしまう大きさで、成長は止まってしまいますし、それぞれの鉱物が自分の形(自形)になることができません。花崗岩が小さな粒々からできているのは、そうやってできた鉱物から成り立っているのです。  それに対して、自形をしている鉱物は、前述とは違うでき方、すなわち、鉱物同士がじゃまをしない環境でできればいいのです。たとえば、ある空洞で、何処ででも鉱物ができるわけではなく、たとえば、空洞の壁から鉱物が生えるようにしてしか鉱物ができないのであれば、空洞の中心に対して、鉱物がのびていくようにできるので、他にじゃまされないで大きくなることができ、また、自分の好きな形である、自形をすることができます。
 火山の爆発的噴火で出てきた火山灰にも鉱物が含まれていますが、火山灰に含まれる鉱物の多くは自形をしています。これは、火山が噴火する以前に地下にあったマグマが冷やされていく時に、鉱物が作られていますが、この時の鉱物は、顕微鏡でみるくらいの小さなもので、まだ、マグマ全体が鉱物に成っている訳ではないので、先に作られた鉱物は、大きくなるときに他の鉱物とぶつからない程度に大きく成っていきます。こういう鉱物がまだ小さいながらも自形をしている段階で、火山の爆発的噴火にともなってマグマが地上へ噴出するので、火山灰に入っている鉱物には自形をしているものが多いのです。このように、鉱物が自形をするためには、ほかにじゃまをされないということが重要なのです。

図7-4 空洞で鉱物の成長が行われると,その鉱物のもっとも好きな形(自形)になることができるが,マグマが冷えて固まっていく中で鉱物が作られると,それぞれの鉱物が大きくなろうとするために,互いにぶつかり合って成長するのを制限してしまうので,自形にならない.

・)鉱物の分類

 一つ一つの鉱物は、その成分や結晶構造などの性質で分けられて名前が付いていますが、もっと大きな区分があります。岩石で言えば、堆積岩や火成岩などの分け方と同様です。しかし、結晶も岩石分類と同様に見方を変えると大きな区分の仕方もいくつもあります。たとえば、成分で分けると、珪酸塩鉱物、炭酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、、、などなど。それ以外にはでき方やどのような場所でできるかによって区分される方法もあります。このような区分で、滋賀県になじみの深いものとして、ペグマタイト鉱物や、スカルン鉱物、があります。

・)ペグマタイト鉱物

 ペグマタイト鉱物は、滋賀県では田上山が一番有名ですが、他の地域にもあります。たとえば、比良山系や、岩根山(甲西町と竜王町の境あたり)などです。これらに共通するのは、花崗岩が分布していると言うことです。滋賀県に限らずペグマタイト鉱物は花崗岩地帯に多いようです。花崗岩は、火成岩(火山活動に関係してできる岩石)のうちの深成岩(火山の地下にあるマグマが火山噴火しないで、マグマだまりの中でゆっくり冷えて固まった岩石)です。ここから考えると、ペグマタイト鉱物もマグマに関係して地下でできていると思われます。ペグマタイト鉱物のでき方は諸説あるのですが、簡単に説明すると次のようなものです。
 花崗岩をつくる鉱物のでき方は、前述したようにできるのですが、マグマが地下でゆっくり冷えて花崗岩に成っていくと、液体の状態にあったマグマが鉱物、つまり個体になっていくため、マグマ中にとけ込んでいた水や炭酸ガスが抜けていき、マグマ中に空洞を作ります。その空洞には、マグマの成分がとけ込んだ高温の水や炭酸ガスなどが充満している状態になります。ペグマタイト鉱物はこういった空洞で、その壁を根っこにして、空洞の中心へ向かって成長するような鉱物を作っていきます。この時の鉱物は、空洞で他にじゃまをされずに大きくなっていくので、自分の好きな形に成ることができるという訳です(図7-4)。
 ですから、ペグマタイト鉱物は、花崗岩が地下でゆっくり冷えて固まっていく最終段階でできることが多いようです。滋賀県のペグマタイト鉱物の代表的なものとしては、水晶や、トパーズなどがあります。

図7-5 地下のマグマから熱水が岩盤の隙間を通って石灰岩に到達したとき,石灰岩と熱水が反応してスカルン鉱物が出来る.

・)スカルン鉱物

 スカルン鉱物は、石灰岩が分布する近くでとられることが多いことから、石灰岩に関係していることがわかります。スカルン鉱物のでき方にもいろいろあるようですが、次のようなでき方が考えられています。
 地下からマグマがあがって来ると、マグマに含まれていた高温の水(熱水)が、周りの岩石の隙間などに入っていきますが、この熱水には、マグマの成分が溶け込んでいるので、マグマ成分と周りの岩石の成分とが熱水によって反応を起こし、隙間に鉱物を作ります。このとき、岩盤として石灰岩があると、石灰成分を主としてマグマ成分と合成した鉱物が作られます(図7-5)。この時に作られる鉱物がスカルン鉱物です。ですから、スカルン鉱物は石灰岩と関係が深く、多くは石灰岩(CaCO3)をつくる成分である、カルシウム(Ca)という成分を持っています。たとえば珪灰石(CaSiO3)などもカルシウム成分を持っています。岩石や鉱物の名前で付けられる”灰”はカルシウムの意味です。

・)岩石中の鉱物は偏光顕微鏡で

 ペグマタイト鉱物やスカルン鉱物などは、自形をしていることが多く、結晶も大きいので肉眼で鉱物を見分けることができるようですが、岩石を作っている鉱物の種類を知るためには、顕微鏡を使います。また顕微鏡といっても特別な、偏光顕微鏡を使います。
図7-7 偏光板の間に鉱物を入れた場合の光の挙動(光の向きに対して垂直にみたイメージ).互いに直角に傾いている偏光板の間に鉱物を入れると,鉱物によって光の挙動が変化する.
図7-6 偏光板の原理.
 偏光顕微鏡は、普通の顕微鏡と違って、偏光装置が付いた顕微鏡のことです。偏光装置の原理については、詳しく説明するのが難しいので、ここでは、岩石や鉱物の特徴を捉えるための装置だと理解してください。
 簡単に説明すると、偏光装置は顕微鏡の下部分に一つ偏光板があり、薄くした岩石・鉱物(薄片)をはさんで上側にもう一つ偏光板があります。下側の偏光板は多くの場合入れっぱなしで、上の偏光板を出し入れして、鉱物の特性を見分けるのですが、このとき下にある光源から出てきた光が、下の偏光板→鉱物→上の偏光板を通って観察者がその光を見たとき、間に入っている鉱物によって見え方が異なっています。
 偏光板というのは、光をある一つの振動方向にそろえるという性質があります。例えば、鉄格子を人が通ろうと思うと、その鉄格子の透き間が空いている方向へ背伸びして通らないと、寝転がっていては通ることができません。そのような感じで、鉄格子のようになっている偏光板の隙間のあいている方向に振動している光しか通ることができないのです。そうやってある方向の振動にそろえられた光は、鉱物が間にないとき、上の偏光板を通して観察者の目に入ろうとするのですが、上の偏光板は下の偏光板があいている隙間の方向に対して90度傾いています(直角方向)。そのため、鉱物が何もなければ、下の偏光板で振動方向がそろえられた光は上の偏光板を通ることができなくて、観察者は光が見えない、つまり真っ暗の状態に成ります(図7-6)。しかし、間に鉱物があるとどうでしょうか?鉱物に光を当てると、鉱物の種類によって、光を変な方向へ振動するように変えてしまいます。そのために、上の偏光板があっても、鉱物によっていろんな光を見ることができるのです(図7-7)。逆にいえば、その光を見ることで、鉱物が何か?ということを知ることができるのです。


(参考図書)
沓掛俊夫(1995)地球史入門.産業図書,173p.
飯山敏道(1998)地球鉱物資源入門.東京大学出版会,195p.
辻 一信・北原隆男(1979)滋賀県下のおもな鉱物・鉱床.滋賀の自然−分冊地形地質編−,479-541.
松原 聰(1999)鉱物カラー図鑑.ナツメ社,274p.
黒田吉益・諏訪兼位(1983)偏光顕微鏡と岩石鉱物[第2版].共立出版株式会社,343p.
都城秋穂・久城育夫(1972)岩石学 I -偏光顕微鏡と造岩鉱物.共立全書,189,219p.

地学講座:第7回「鉱物のいろいろ」
2003年3月5日(水)
(c) satoguchi




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