このページは,琵琶湖博物館の内部向けの8回連続講座としておこなった時に作ったテキストを,web用に再構成したものです.
内部向け講座について

第4回「地質時代区分と絶対年代」

A展示室の場所:全体的に

図1 地質時代区分。境界の年代は、新版「地学事典」を参考にした。

・)地質時代の分け方

 過去の事を説明する場合、歴史でもそうですが時代をいつくかの関係する出来事で区切って時代を区分します。  もともと地質の研究が始まった頃には、その年代を数字として知るすべはありませんでした。ですから、地球ができたのはいつ頃か?という議論も長い間様々な数字が提案されていました。そういった数字による年代がはっきりする以前に、地球の歴史(地球史)を考える場合には、歴史時代と同じように”〜時代”というような時代区分をして表しました。恐竜を現代によみがえらした映画“ジュラシックパーク”のジュラシックというのは、“ジュラ紀の”という意味です。このジュラ紀というのは、地球の歴史を表す時代区分の一つです。図1は時代区分を表した図です。下から上へと新しい時代になっています。現在は、一番上にある、新生代第四紀完新世という時代になります。区分の仕方としては、大きな区分があり(〜代)、それらはそれぞれより細かく区分されています(〜紀や、もっと小さく〜世)。
 こういった地質時代の区分は、もともとヨーロッパの方で地層と化石の研究から行われました。地層中にある化石の種類によって地層を区分したものです。これは、化石帯区分といって現在の化石の研究でも行われています。たとえば、ある地域、またはボーリングをしたときに、ある化石が優勢な部分で地層区分を分けたりします。ただ、地質時代の区分は、狭い地域だけで行われたモノではなくて、非常に広い範囲で行われました。そういった区分をするときに、昔のことですから、顕微鏡で見なければわからないような小さな化石ではなくて、たとえば三葉虫やアンモナイトの化石といった肉眼で確認できる程度の大きさの化石、しかも動物の化石で行われました。このため、地質時代区分のもともとは化石による地層区分で、その種類の化石が出てくる地層の時代、という意味の時代区分でした。 このような区分の仕方は、大きな区分の名前にも現れています。古生代、中生代、新生代は、それぞれ古い生物の時代、中くらい昔の生物の時代、新しい生物の時代、という意味です。

図2 地質時代区分の概念図。地層における化石帯の区分が元になっている。区分の境界は、多くの種類の生物の絶滅と関係している事がわかる。

・)時代区分は絶滅が関係している

 地質時代の区分が、特徴的な化石による区分によって行われているので、ある時代に特徴づけられた化石は、別の時代、または次の時代には見つからない、つまりその生物がいなかった事になります。このことは、ある生物が次の時代へ行く前に絶滅しているという事を示していると考えられます(図2)。事実、中生代と新生代の境界付近では、恐竜やアンモナイトが絶滅しています。このようなことを考えると、大きな区分は、よりたくさんの生き物(目に見える大きさの動物)が絶滅し、小さな区分は大きな区分よりは少ない種類の生き物が絶滅していると考えられそうです(ただし、第四紀を細分している〜世は必ずしもこれが当てはまりません)。
 絶滅、と聞くと、中生代と新生代の境界、つまり白亜紀の終わりにあった恐竜の絶滅を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、絶滅の規模としては、中生代と新生代の境界よりも、古生代と中生代の境界の方がずっと絶滅の規模としては大きかったようで、その時には無脊椎動物種の90%以上が絶滅を起こしたようです。この要因は海の無酸素化が原因だと言われていますが、なぜこのような事が起こったのかについてはまだよくわかっていません。
 地質時代の区分は絶滅と関係していますが、これは動物化石で行われた区分ですので、植物化石の絶滅や進化は、この時代区分とややずれています。
 ところで、古生代は古い生物の時代とありますが、それ以前には生物はいなかったのでしょうか?実際にはそれ以前からも化石は見つかっていますが、古生代からより多くの化石が発見されることから、この時代区分をした当初は、古生代のはじまりが生物の始まりだと考えたのだと思われます。古生代より前の時代からも肉眼で観察される化石は見つかっています。また、顕微鏡で観察される大きさであれば、約38億年まえからもバクテリアの化石と思われるものが見つかっています。

・)絶対年代

 絶対年代というと、それがまさに絶対正しい、という意味にとられるかもしれませんが、この絶対は”他に比べたりする事がない”という意味での絶対です。絶対の反する言葉に、相対、があります。白亜紀や第四紀という時代は、ある基準(化石の種類)で作られた地層の区分なので、その区分に併せると(対比させると)〜という時代になる、という相対的な時代です。そのことから、地質時代区分の年代は、「相対年代」という言い方もします。絶対年代は相対年代のように”併せる基準”という比べるモノがなく、それだけで年代を表せるモノということで、つまり数字で出される年代の事です。
 地球の歴史については古くから、数字で表そうという、つまり何年くらい前の事か?を知ろうという欲求があったようです。それが現実のモノになってきたのは、放射性元素、というものが見つかってからです。天然で放射線を出しながら違う物質に変わっていくものがある、という現象がわかってから、それを使えば、年代を数字で表せるのではないかと考えたのです。

図3 ある放射性元素が、放射線を出しながら一定期間で半分違う元素に変わる。

・)放射性元素による年代測定

 放射性元素とは、元々の元素が放射線というものをを出しながら違う元素に変わっていくモノで、ウランなどが有名です。放射性元素が違う元素に変わっていくのには、規則性があり、ある一定時間で半分が変わるというものです。たとえば、1年で半分かわる元素があるとすると、その元素は、1年経過するともとの半分が違うモノに変わって、そのまた1年後には残りの半分の半分がかわる。つまり、2年後には全体の4分の1が変わっているという事になります。この”半分が違う元素に変わる時間”のことを、「半減期」と言います(図3)。
 これを年代測定に応用しようとすると、簡単には、放射性元素とその元素が変わってしまうはずの元素の量を調べると、わかります。前述の例で考えると、半減期が1年の元素について、元々の元素の量が、変化した元素と同じ量あることがわかれば、その元素が放射線を出し始めてから(たとえば、その元素ができてから)1年たった、ということが考えられます。
 この半減期は、元素によって違いますが、より最近の事をはかるためには、半減期が短い元素がよく、逆に、より昔のことを知るためには、半減期が長い元素が適しています。たとえば、考古学などでよく使われる炭素14(窒素14に変わる)は、半減期が5568年で、もっと古い時代のことをはかるものは、たとえばルビジウム87(ストロンチウム87に変わる)などは半減期が499億年です。
 図1には、地質時代のそれぞれの境界に絶対年代を示しています。これは、時代区分の境界付近の年代にある地層や岩石の放射年代測定をし、もっとも確からしい年代を採用したものです。

・)その他の年代を知る手がかり〜示準化石〜

 化石とその年代の関係が明らかになっている場合は、その化石が出てくるだけで、どういう時代のものか?がわかる場合があります。そういった化石を”示準化石”といいます。示準化石としてより優れているモノは、広い範囲でみつかり、ある特定の期間つまりより短い期間にだけ存在するような生き物が化石になったものです。よく言われることですが、ヒトは示準化石として非常に優れています。ちなみに、当時の環境を示す化石のことは示相化石といいます。

図4 左図は、鮮新世〜更新世の古地磁気層序。右図はある地層の古地磁気層序対比の概念図。通常、地層の古地磁気は砂層や礫層では行えない。また、古地磁気層序は現在と同じ(黒)か逆転(白)かの繰り返しで対比を行うため、白黒の対比がずれると年代が大きく変わる。

・)〜古地磁気〜

 現代の地球で方位磁石を使うと、ほぼ北方向へN極が向きます(実際には真北から数度傾いている)。このことは一見当たり前のようですが、方位磁石の指す方向は地球ができて以来ずっと同じという訳ではなく、現在の向きと全く逆の方、つまり南方向を指していた時代もあったことがわかっています。こういった昔の地磁気の向きを古地磁気と言い、地層が保存している、それができた当時の地磁気の向きをはかることによって、地層の年代を決定する時に利用する事ができます。なぜなら、地磁気の向きが現在と同じ時期と、逆の向き(地磁気の逆転という。N極が南を指している、つまり今と逆の方向を向いている)の時期がわかっているため、その標準となっているものと比較することで利用できます。ですから、古地磁気も相対年代になります。
 普通、今と同じ磁極の向きを黒で表し、今と逆の磁極の向きの時期は白で表して、白と黒の帯の繰り返しで古地磁気の時期を表します(図4)。図4を見るとこれまでに何度も地磁気の向きの逆転が行われている事がわかるでしょう。実際の地層で古地磁気を調べたときは、地層のある部分は今と同じや、逆転しているという図を白黒の帯で表し、その白と黒が標準となっている古地磁気のどの年代の所へ当てはまるか?を検討します。地磁気は、白黒の繰り返しで表されるだけなので、白黒の順番がずれて年代を出してしまうことなどもあり得ます。ですから、実際には、年代がわかるような他の指標、たとえば、示準化石や絶対年代の測定などと一緒に検討がされます。

図5 火山灰は火山の爆発的噴火活動によって噴出し、広域に広がる

・)つけたし

 火山灰の対比も年代をしる手がかりとしてあります。火山灰は、火山の爆発的な噴火で噴出して、広域に、ほぼ同時期に地層中に残るので、同じ火山灰を見付けること(火山灰の対比)は、その地層に同じ時間面を設定することになります。ですから、あらかじめ年代のわかっている火山灰と同じ火山灰を見付けることは、その地層の年代をしる事につながります。もし、年代がはっきりしない場合でも、少なくともその火山灰は同じ時間を指すので、その火山灰が入っている地層同士は同じ年代のものだということがわかります。つまり相対年代がわかるということです。

   
(参考図書)
丸山茂徳・磯崎行雄(1998)生命と地球の歴史.岩波新書,275.
沓掛俊夫(1995)地球史入門.産業図書,173p.
アーサーホームズ(1983)一般地質学I「原書第3版」.東京大学出版会,245p.
大原 隆・西田 孝・木下 肇,編(1989)地球の探求.朝倉書店,226p.
地学団体研究会,編(1996)新版地学事典および付図付表索引.平凡社,1443p+374p.

地学講座:第4回「地質時代区分と絶対年代」
2003年2月13日(木)
(c) satoguchi




第3回火山の活動

地学のトップへもどる

第5回日本列島の成立