このページは,琵琶湖博物館の内部向けの8回連続講座としておこなった時に作ったテキストを,web用に再構成したものです.
内部向け講座について

第3回「火山の活動」

A展示室の場所:入り口付近の滋賀県の山をつくる岩石、博物館の地下を探る、など

図1 火山のイメージ図

・)火山とは?

 岩波書店の広辞苑[第五版]には「地下の深所に存在する溶融したマグマが、近くの裂け目を通って地表に噴出して生じた山」とあります。この文章はちょっと難しいですが、一般的な火山のイメージとしては、高温の火柱(溶岩)や煙を吐いている山、という印象があるかもしれません。火山を考える上で重要なのは、噴火する、という事もそうですが、火山の地下にあるマグマの存在を忘れてはいけません。
 火山は、図 1のように地上にある噴火する山と、その地下にある岩石が高温のために熔けたマグマがたまっている”マグマだまり”があります。火山の噴火は、地下にあるマグマだまりのマグマが地上へ昇ってきて、マグマを噴出する現象です。しかし、火山の活動と行った場合、火山噴火だけを指すのではなく、地下でのマグマの動きなども火山活動になります。ですから、たとえば火山の近くの温泉に噴泉がでたり、火山性の地震や蒸気をあげることなども火山活動の一部になるわけです。

・)火山でできる岩石

 火山は岩石が作られている場所でもあります。火山が噴火して溶岩が流れ出ると、それが冷えて固まって岩石になります。溶岩は、火山の地下にあるマグマが火山噴火によって地上に放出されて、冷えて固まることで岩石になります。しかし、マグマは溶岩のように火山噴火で地上に出てこなくても岩石になります。火山の地下にあるマグマは、地中でゆっくりと冷やされていきます。マグマはゆっくりと冷やされていくと、マグマ中の成分によっていろいろな鉱物(結晶)を作っていきます。つまり、マグマが地中にずっとあると、マグマ全部をつかっていくつもの鉱物をつくります。そうすると、鉱物を寄せ集めたような岩石ができあがります。これを”深成岩(しんせいがん)”といいます。深いところでできた岩石、という意味です。
表 1 火成岩の成因と成分による分類。実際に分類する場合には構成鉱物(岩石を作っている鉱物は何か?)の量比なども関係する。
火山岩
火山噴火でできる
流紋岩 安山岩 玄武岩 超塩基性岩
半深成岩
火山噴火しないで割れ目などで比較的ゆっくり冷やされて固まる
花崗斑岩 ヒン岩 輝緑岩
深成岩
火山噴火しないでマグマがゆっくり冷やされて固まる
花崗岩 閃緑岩 ハンレイ岩
白っぽい←   →黒っぽい
 では、溶岩のように火山噴火で、マグマが地上に放出されるとどうなるのでしょうか?マグマはゆっくり冷えると鉱物を作りますが、地上に放り出されるなどして、急激に冷やされると鉱物を作りません。鉱物を作らないで固まったマグマは、火山ガラスというものになります。”ガラス”というのは、コップや窓にあるガラスと似たようなものです。実際、窓ガラスなども高温でとかしたものを冷やして作っています。ただし、溶岩など火山噴火でできた岩石には、噴火する前に地中でマグマが冷やされていた時に作られた鉱物も含まれているので、すべてが火山ガラスでできている訳ではありません。このように火山の噴火でできた岩石を”火山岩(かざんがん)”といいます。
 深成岩も火山岩ももっと細かく分けられています。それは、その岩石の成分や構成される鉱物によって分けられます(表 1)。この表をみると同じ成分の岩石でも噴火するか地下でゆっくり冷えるかで名前が違っていることがわかります。岩石の成分はその色にも反映していて、流紋岩などの白っぽい岩石は二酸化珪素(SiO2)の量が多く、玄武岩などの黒っぽい岩石はその反対に二酸化珪素が少ないのです。玄武岩などの黒っぽい岩石は二酸化珪素の量が少ない代わりに、鉄などの重たいものの成分が多くなります。ですから、同じ大きさの流紋岩と玄武岩を比べると、玄武岩の方が重いです。表3-1にでてくる深成岩と火山岩は、A展示室自然史研究室の机の引き出しをあけると入っています。
 また、表 3-1には深成岩と火山岩の間に”半深成岩(はんしんせいがん)”というものがありますが、これは、名前に深成岩とついていることから、やはり地中で冷えて固まった岩石なのですが、深成岩よりも早く固まるような場所でできます。たとえば、地中の割れ目に沿って、マグマが入っていくと、マグマだまりにあるよりもその場所にあるマグマの量が少なく、地下の冷えた岩石に接している部分が多いために、マグマだまりよりも早く冷えて固まってしまいます。半深成岩もやはり成分によって名前が違っています。
 火山でできる岩石は、そのでき方と成分で分類されていますが、成分で分けるのはある数値で境を作っているだけなので、微妙な数値のものは分類が難しいです。

・)マグマの成分と火山噴火

図2 炭酸水の発泡。とけ込んでいる炭酸ガスが泡に成ることで、炭酸水の体積が増える。

 火成岩の分類には成分による区分がありますが、その基準となる成分は主に二酸化珪素(SiO2)の量です。この二酸化珪素の量は、色の違い以外にはどのような意味があるのでしょうか?大きな意味としては、その岩石をつくるマグマの粘性に違いがあることです。粘性とは粘りけのことで、たとえば水飴や蜂蜜などは、水に比べると粘りけがあります。粘りけがあることは、粘性が高いと表現されます。二酸化珪素の量が多いマグマ(流紋岩の方)は粘性が高く(粘りけがある)、逆に二酸化珪素が少ない方が粘性は低くなります(粘りけが少ない)。この粘性の高い低いは、さらに火山噴火の仕方とも関係が深いのです。  火山噴火と粘性の関係を述べる前に、火山噴火がどういうものかを考えましょう。
 火山噴火は、地下にあるマグマが地表に出てくるという現象です。マグマは岩石の熔けたものですが、その中には火山ガスと呼ばれるガスがとけ込んでいます。イメージとしては、炭酸水のようなものでしょう。炭酸水は、二酸化炭素というガス(炭酸ガスと呼ばれる)が溶け込んでおり、通常の状態でも少しずつ泡としてガスが出ていきます。火山の噴火は、この炭酸水を使ってイメージする事ができます。瓶や缶にはいった炭酸水にふたをして振ると、炭酸水にとけ込んでいる炭酸ガスが大きな泡となって(発泡する)時には、炭酸水そのものが噴出してきます(図2)。さらに、炭酸水を勢いよく振ると、爆発したように炭酸水がキリのように噴き出すことがあります。火山噴火も似たようなものとしてイメージできます(実際には大分違う)。マグマにとけ込んでいる火山ガスが何らかの原因で泡になってくると、マグマ全体の体積が増え、マグマだまりからマグマが隙間を探して出ていこうとします。火山ガスが泡になるのが激しいほど、マグマが出ていこうとする速さも早くなるので、より爆発的な噴火をしようとします。火山噴火はこのように行われますが、粘性との関係はどうなっているのでしょうか?
 マグマの粘性に関係なく、マグマから火山ガスの泡は出てきます。しかし、マグマの粘性が高い(粘りけが強い)ほど、マグマから泡になった火山ガスは、マグマの粘性のために、なかなかマグマの外へ排出されないで、泡の状態でマグマ中に残ります。泡の状態でマグマ中に残れば、マグマとしての体積がどんどん大きくなるので、マグマが外へ出されるのが早く進み、結果、より爆発的な噴火へとつながります。逆に粘性が低いと、火山ガスはマグマ中に残りにくいので、マグマが外へ出されるのがゆっくり進み、緩やかな噴火となります。実際、粘性の高い二酸化珪素をたくさん含むマグマほど、爆発的な噴火をします。そのとき、その爆発力があまりに大きい場合は、マグマは外に放出されるときにちりぢり粉々に成ってしまいます。炭酸水が勢いよく噴出するときに霧状に成ってしまうのと同じようなイメージです。そうやって粉々にされて外に放り出されたマグマは、火山灰となります。また、その粉々の度合いが悪いと、粉状ではなく塊状になります。その塊は、マグマにとりのこされた泡のために、孔だらけの岩石、つまり軽石になります。こういった爆発的な噴火をしたときに出る煙状の噴煙の正体は、火山灰や粉になれなかった軽石です。火山灰は、マグマが粉々になって地上に出てきたものですから(多くは空中へ放り出される)、地上や空中で急激に冷やされて、大部分は鉱物ではなくガラスになります。これを特に火山ガラスといいます。ですから、火山灰の大部分は、火山ガラスからできていて、噴火前に作られていた少しの鉱物を含んでいます。また、こういった爆発的な噴火をする火山は、空中に火山灰を放出するだけではなく、火砕流をおこします。火砕流は粉状の火山灰と、高温の火山ガスが塊となって山体を駆け下りる現象です。また、山体を駆け下りなくとも、空中高いところまでに巻き上げられた噴煙がそのまま落ちてくると火砕流が起こります。
 粘性の低い(粘りけの弱い)マグマ、つまり、二酸化珪素の少ないマグマは、粘性の高いマグマほど爆発的な噴火をせず、外に放出される時も粉々にならず、どろどろのものが流れ出てきます。これは、ハワイなどで見られる溶岩になります。

図3 火山の爆発的な噴火。

・)日本に多い火山は?

 日本には、火山灰を噴出する、爆発的な噴火を起こす火山が多いです。これは、古琵琶湖層に火山灰がたくさん挟まっていることからもわかります。つまり、日本には古くから(少なくとも400万年前)こういった爆発的な噴火を起こす火山があったということを示しています。
 ところで、火山噴火は災害を起こします。火山の噴火規模が大きいことと災害規模の大きいことは必ずしも一致しません。災害というのは、人がどれくらい被害を受けるか?ということで決まるため、人がたくさん住んでいるところの方が災害規模が大きくなる可能性を秘めています。そうはいっても、噴火規模が大きいほど人々がうけるダメージは全体的に大きくなることが予想されます。火山噴火の規模が大きいのは、より粘性の高いマグマをもつ火山です。日本には残念ながらこのような噴火規模の大きい火山の方が多いので、災害も大きくなりがちです。
 しかし、火山から受けている恩恵も同時に大きいです。たとえば、火山地域では、温泉がわいたり火山そのものを楽しんだりと、国定公園や国立公園が多く、観光地にもなっているところがほとんどです。また、火山によって豊富な地下水が保たれたり、火山で生じる熱水は、鉱石資源をもたらすこともあります。また、富士山などは、古くから霊山として親しまれてきましたし、文化的に寄与したところも大きいでしょう。ですから、日本という土地柄、また、火山をよく知ってうまくつきあえるように(たとえば、噴火やそれによる災害などについて知るなど)していきたいものだと思います。

・)A展示室入口付近の岩石

 A展示室入口付近の岩石については、前回述べたように、モニターを境に向かって左側が火成岩です。ここには、花崗岩(深成岩)、花崗斑岩(半深成岩)、溶結凝灰岩(火山岩)、玄武岩(火山岩)があります。溶結凝灰岩はでき方と成分によって分けられた表 3-1には当てはまらない分け方で、岩石のでき方によってつけられた名前です。溶結凝灰岩は名前からすると、”灰が熔けて固まってできた岩石”です。”灰”は火山灰を指しています。これは、爆発的噴火によって放出された火山灰が、火砕流をおこしてできたものです。火砕流は噴出したときにはまだ高温の状態ですので、それが地上で止まった後でも、非常に熱く、その熱によって、火山灰が再度熔けてしまうことがあります。溶結という溶けて固まるという意味は、このことを指しています。つまり、溶結凝灰岩は、爆発的な火山噴火による火砕流によってできた岩石だと言えます。火砕流をだすような爆発的な噴火は、前述の事で言うとより二酸化珪素の量が多いマグマで起こりますから、多くの場合、溶結凝灰岩は流紋岩の部分に入ります。
 玄武岩は、前回・前々回に出てきたプレート・テクトニクス論ですこし説明しましたが、今の滋賀県がある地域付近でできた岩石ではなく、大洋の沖合でできたものと考えられます。この玄武岩の近くには珊瑚礁などでできる石灰岩が分布することから、珊瑚礁をつくる土台になる海山を作っていたと考えられます。海洋プレートができる場となっている海嶺や、大洋の中央にあるホットスポット呼ばれる場所から吹き出す溶岩の多くは、玄武岩やより二酸化珪素が少ない黒っぽい岩石です。

図4 より大規模な噴火は、地下にあるマグマの多くを噴出してしまうために、カルデラをつくる。

 展示室入口付近にある火成岩のうち、玄武岩をのぞく3種の岩石は、非常に関係が深いです。滋賀県に見られる花崗岩のすべてが同じ時期にできた訳ではありませんが、少なくとも、南側にある花崗岩はできた時期が近いようです。また、この地域にある花崗斑岩や溶結凝灰岩も関係が深い事がわかっています。これらはできた時期も近く、成分も似ています。成分でいえば、溶結凝灰岩は流紋岩のあたりですから、3種類とも同じような成分だということがわかるでしょう。また、この3種類は似た成分で、火山の異なった場所でできていることがわかります。このことから、これらの岩石は、同時期の火山活動によってできたと思われます。火山噴火は、溶結凝灰岩をつくるような大規模で爆発的な噴火を起こしました。また、花崗斑岩は環状に分布していることから、爆発的噴火によって作られたカルデラの割れ目にそってできたと考えられます。花崗岩は、その地下のマグマだまりで冷えて固まったと考えられます。

(参考図書)
沓掛俊夫(1995)地球史入門.産業図書,173p.
大久保雅弘・藤田至則,編著(1996)地学ハンドブック[第六版].築地書館,242p.
下鶴大輔(2000)火山のはなしー災害軽減にむけてー.朝倉書店,166p.
宇井忠英,編(1997)火山噴火と災害.東京大学出版会,219p.
町田 洋・新井房夫(1992)火山灰アトラス[日本列島とその周辺].東京大学出版会,276p.

地学講座:第3回「火山の活動」
2003年2月5日(水)
(c) satoguchi




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