このページは,琵琶湖博物館の内部向け8回連続講座としておこなった時に作ったテキストを,web用に再構成したものです.
内部向け講座について

第2回「岩石のでき方」

A展示室の場所:入り口付近の滋賀県の山をつくる岩石
  (海でできた岩石が山を作っている説明)

図1 A展示室入口付近の滋賀の山を作る岩石。モニターを境に向かって右側が堆積岩、左側が火成岩。

・)大きな区分(表1)

 一口に岩石といっても、いろんな種類があって、それぞれ名前が付いています。それらは、でき方や構成物、成分などによって分類されて名前が付けられています。  岩石の大きな区分としては、岩石のできかたによる3つの区分があります。  ”堆積岩(たいせきがん)”  砂や泥、礫などが地層として堆積した(たまった)後に固まった岩石。元々は地層を作っているが、それが固まって岩石になっている。泥岩、砂岩、チャートなどがある。堆積してできた岩石という意味。  ”火成岩(かせいがん)”  火山の活動によってできた岩石。火成岩はさらに、火山噴火による噴出物からできたもの(火山岩)、火山が噴火しないでできたもの(深成岩)に分かれる。火から成る岩石の意味。  ”変成岩(へんせいがん)”  堆積岩や火成岩などの岩石が、高温や力によって別の岩石に変化したもの。もともとあった岩石に高温が加わると、その岩石が持っていた鉱物が、一度熔けて違う鉱物を作り直したり、高い力によって、一部の鉱物が熔けたり、鉱物の配列が変わったりする事によって違う岩石になることによってできる。ホルンフェルスや片麻岩などがある。変わって成る岩石の意味。  これら3つの区分は、そのでき方による区分ですが、この区分ですべてきっちりわけられるという訳ではありません。たとえば、火山の爆発的な噴火で噴出されたものは、粉々になり、地面で堆積して岩石になるものもあります。こういったものは、堆積岩とするべきか?火成岩とよぶべきか?難しく、ほかにもこのような中間的な岩石が存在します。とはいえ、多くは前述の3つで分けることができます。
表1 岩石の成因による分類。この分類で完全に分かれるわけではなく、中間的な岩石などもある。
堆積岩 物質がたまって地層を作り、それが固まってできた岩石 砕屑性 泥や砂など。火山性のものは、火成岩にれる分け方もある
生物・化学的 石灰岩やチャートなど生物と化学作用でできるもの。
火成岩 火山噴火や噴火しないままマグマが冷えるなど、火山の活動に関係してできた岩石 深成岩 火山が噴火しないで、地下にあるマグマがゆっくり冷えて固まる
火山岩 火山噴火によって、地下にあるマグマが噴出してできる
変成岩 もともと何かの岩石が、高い温度や圧力によって、別の岩石に変化した岩石 熱による マグマが地下からあがってくるなど,高温の熱で周りの岩石が変化してできる
圧力による まわりから力を受けることで、違う岩石になる
 A展示室の滋賀県の山を作る岩石の展示は、堆積岩と火成岩がありますが、モニターを境に向かって右側が堆積岩、左側が火成岩です(図1)。

・)海でできた岩石

 堆積岩は、砂や泥が堆積してできる岩石なので、それらの堆積する場所によってできる場所が異なります。ただ、砂や泥はもともと何かの鉱物や岩石がぼろぼろに崩れ、それが風や水によって移動されて堆積するという共通点があります。こういった岩石は、その構成されている粒の大きさで呼び名が変わります。つまり、泥でできているモノは泥岩。泥より粒の大きい砂でできているものは砂岩、さらに大きな粒の礫でできているのは礫岩となります。これらは、たまってできるので本来は地層を作っているので、古琵琶湖層などにみられる地層と同じですが、時間がたっているために、岩石になっているのです。
 滋賀県の山を作る岩石の堆積岩は、いずれも海で作られました。それは、中に入っている化石などからわかります。では、海のどんなところでできたのでしょうか?泥岩は泥からできています。泥がたまるような場所は水の流れがあまりないところです。そういった場所は、陸から少し離れた静かな海底が考えられます。砂岩は砂からできているので、砂がたまるような場所が考えられます。それは砂浜などが考えつきますが、滋賀県の砂岩はそういった場所ではなく、やはり海の底でたまったようです。普通砂など粒子の洗い物は、陸の近くにたまってしまい、海の深いところや陸から離れた場所にはほとんど流れていくことがありません。それでも、そういう場所へ砂が運ばれていく事があります。これは、タービダイトと呼ばれるモノで、陸近くにたまった砂が、地震などの揺れや嵐等によって海が荒れた時に、砂の塊となって陸斜面を崩れ落ちていくという事が起きます(図2)。そうやって、海の深いところまで砂が運ばれていってたまったものが、この砂岩だと考えられます。
図2 地震の揺れなどで、陸近くのものが沖合いへ流れていく。このようにたまったものは、タービダイトと呼ばれる。

・)海でできた生物に由来する岩石

 堆積岩は基本的には、泥や砂といった分け方が基本的ですが、堆積岩の中でも特に、主にある成分のものからなる岩石には、別の名前が付けられています。こういったモノは生物に由来します。例えば、放散虫という微生物の殻がたまってできた岩石はチャートと呼ばれます。チャートは、水晶(石英)と同じ、二酸化珪素、という成分でできています。放散虫は今も海にいますが、放散虫で海がいっぱいになるほどわんさかいるわけではないので、岩石になるほどたまるには時間がかかります。また、泥や砂などがたまらないような陸から離れた深い海でたまります。こういう放散虫がたまる場所に泥が規則的にたまると、縞々模様のチャートができます(図3)。
図3 チャートの縞々。チャートと泥が交互にたまると、縞模様にみえる。たまった後に圧力を受けて、変形すると、曲がりくねった縞模様になる。
 セメントの原料になる石灰岩も生物に由来する岩石です。石灰岩は、石灰、つまり炭酸カルシウムという成分でできています。これは、フズリナというもう絶滅してしまった米粒〜豆粒大の生き物や、ウミユリやサンゴなどからできています。珊瑚礁などを思い浮かべると、暖かい海で、大陸などからは離れた小さな島、というイメージがあります。実際そういうところでできるようです。

・)海でできた岩石が滋賀の山にある理由

 砂岩は、海の深いところといっても陸の比較的近くでできるようです。しかし、泥岩は陸から割合に離れた場所で、チャートや石灰岩などは、陸から離れた沖合の海でできることを考えると、日本の近くでできたとは考えにくいです。このことは、前章のプレートテクトニクス論で説明されています。
 地球はプレートといういくつかに分かれた動き回る板状のもので外枠を作っています。そのプレートには軽い大陸プレートと重い海洋プレートがあり、大陸プレートと海洋プレートがぶつかるところでは、大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込んでいきます。海洋プレートは海にあるプレートなので、プレートの上に海でたまる堆積物をのせています。その堆積物は、海洋プレートが動いていくに任せて一緒に運ばれていきます。そして、大陸プレートの下に沈み込む時に一緒に沈み込んで行くわけではなく、大陸プレートにぶち当たって、大部分はそのまま大陸プレートの端にくっつけられていきます。つまり、大陸プレートの一部として端っこの部分を作っていく事になります。このように、海洋プレートに載せられて運ばれたものが、大陸プレートにくっつけられてできたものを”付加帯”とよんでいます。日本列島の大部分は、こういった付加帯でできています。これが、沖合でできた岩石が滋賀の山を作っているという説明です。
図4 付加帯のでき方。海洋プレートにのっているものが、海洋プレートの沈み込みに伴って、大陸プレートに付加されていくことでできる。

 大洋の真ん中にあるホットスポットと呼ばれる場所でできた火山島は、その海洋プレートが動くのに伴ってホットスポットから離れてしまうと火山の活動がなくなります。火山活動がなくなると島の地盤のもとになる溶岩が火山から供給されなくなるため、風雨や波浪などによって島は少しずつ削られます。ただし、こういった島が暖かい海などにあると、その周りに環礁など珊瑚礁を作ることがあります。そうすると、サンゴから石灰岩ができますから、滋賀県の山に石灰岩がある、というのも前述の付加帯によるものだと考えられます。事実、滋賀県で見られる石灰岩が分布する地域の近くには、ホットスポットなどでできる岩石が分布します。

・)火山に関係してできる岩石

 火山に関係してできる岩石については、火山がどういうものか?という説明が必要なので、次章で詳しく述べますがここでは簡単に説明します。
図5 火山が噴火せずに、マグマが地下で冷えて固まると深成岩になる。噴出してできた岩石は火山岩になる。マグマだまりから割れ目に入り込んだマグマは、深成岩よりも早く冷え、半深成岩になる。
 火山は、その山の地下に、岩石が高温のために熔けたマグマというものがたまっています。そのマグマが噴出されると火山の噴火となります。マグマは長い間地下にあると、ゆっくりと冷やされて固まってきます。マグマはゆっくり冷えていくと単に堅くなるだけではなく、鉱物をつくりながら固まっていきます。そうやって、マグマが噴出されないで地下でゆっくり冷えて固まった岩石を、深成岩、とよびます。深成岩は地下でゆっくり冷えて鉱物を作りながら岩石になるため、鉱物の集まりでできていて 、見かけが粒々ばかりの岩石に見えます。深成岩の有名なモノは、花崗岩があります。墓石によく使われる岩石です。
 それに対して、マグマが火山噴火によって噴出されて冷えて固まった岩石は、火山岩、と呼ばれます。火山岩ができる時は、マグマが空中、または地上に放り出されてしまうので、地下にあるときよりも急激に冷やされ、鉱物を作らずに冷えて固まってしまいます。マグマは急激に冷えるとガラスができます。窓にあるガラスなども同じようにして、高温で熔けているものを冷やすことでできています。そのため火山岩は、噴火する前に地下にあったマグマが少しずつ作っていた少しの鉱物と 、急に冷やされて鉱物にならなかったものでできていています。ですから、火山岩はあまり鉱物を含まずに、粒々の集まりではなく、少しだけ入っている鉱物(粒)自体も小さいものです。A展示室では、玄武岩があります。また、火山の爆発的な噴火で噴出される火山灰が固まってできる凝灰岩(灰が固まってできた岩石の意味)なども火山岩です。
 火成岩には、深成岩と火山岩以外に半深成岩というものもあります。これは、深成岩という名前がついていることから、噴火しないでできた岩石という意味です。しかし、半、とついていることから、完全な深成岩ではない事がわかります。これは、地下でマグマが冷えて固まったけれど、深成岩ほどゆっくりではなく冷えてできます。例えば、マグマが地下の割れ目に沿って入っていくと、その部分は狭い場所なので、深成岩のできるマグマだまりにあるよりは、早く冷やされます。そういうところで半深成岩はできます。展示室では、石英斑岩が、半深成岩にあたります。

図6 火山の噴火が爆発的噴火の場合、噴出されているモノは、火砕物質(火山灰や軽石)となる。火山灰がたまって岩石化したものは、火山岩でもあるが、堆積岩と考えることもできる

・)A展示室、滋賀県の山を作る岩石

 A展示室の滋賀県の山を作る岩石の展示では、堆積岩と火成岩がありますが、モニターを境に向かって右側が堆積岩、左側が火成岩です。大まかに分けられる3つの区分のうち、展示には変成岩がありません。これは滋賀県に変成岩がない、というわけではなく、山を作る岩石としての大きな岩体としてはないというだけで、滋賀県にも変成岩はあります。例えば、熱いマグマが地上へ向かって上昇してくるときに、地下にある岩石の間を昇ってきます。そういうときに、昇ってこられる岩石は、その熱で違った岩石を作ります。そうやってできた岩石が滋賀県の山に見ることができます。


(参考図書)
黒田吉益・諏訪兼位(1983)偏光顕微鏡と岩石鉱物[第2版].共立出版株式会社,343p.
平 朝彦(1990)日本列島の誕生.岩波新書,226p.
化石研究会 編(2001)化石の研究法 採集から最新の解析法まで.共立出版株式会社,1443p.

地学講座:第2回「岩石のでき方」2003年1月29日(水)
(c) satoguchi




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