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 Goin' at Field! フィールドへ出よう!

これは大変だ、自然がなくなってしまう。

主任学芸員 秋山廣光 (魚類生態学)


 のっけから変ですが、私、出不精なんです。休日は、買い物にしても、遊びに行くにしても、ともかく人混みは嫌なのです。家でグターとしているのが一番いいんです。それでもって、どこが「フィールドに出よう」かと言いますと、フィールドは気持ちいいのです。(オイオイ、自己矛盾してないかい。)

 実は、仕事がら採集や調査があるのですが、同じ場所へ2度行くと、大して時を経ていないのに、あたりの様子がずいぶん変わっているのに驚かされることがあるのです。元々は、琵琶湖文化館で水族の管理を担当していましたから、県内の色々な場所へ魚の採集に出かけるのですが、中にはリュックサックを背負って山登りさながらの採集もありました。そこは、やがて便利な林道が開設され、すぐ近くまで車で行けるようになり、しばらくするとその林道は舗装されどんな車でも行けるようになりました。しかし、そうなると、あっと言う間にゴミは増え周囲の自然は汚れて行きました。特定の魚種について記録がある場合は、何度も同じ場所へ採集に出かけましたが、その場所で採集できなくなってきたときは、新しい場所を開拓しなければなりませんでした。

 どこへ行けば、どんな魚が採集できるか、その記録は大切な財産でした。でも、大して無いのです。記録が。考えてみれば、滋賀県には琵琶湖に注ぐ大小の河川が数百もあるのです。そのほとんどの川にどんな魚がどこまで生息分布しているのか全然といってよいほど調査されていなかったのです。それも、ホンの少し時が経っただけで、周囲の景観が変わり生き物たちがいなくなっていたりするのです。

 これは大変だ、自然がなくなってしまう。ある時ふと考えついたのです。変わる前に自分の子どもだけには見せておこう、と(何と利己的な!)。それからは、休みになると家族を連れて愛車の軽四駆で道なき道を駆けめぐり……考えてみると、これが自然破壊だったのですが、(反省)……移りゆく自然の姿を満喫していたのです。やがて文化振興事業団の電気技師でキャンピング大好き人間のI氏とその友人が加わり、休日となると山菜採りやピクニックのために野山を移動することが多くなりました。

 が、そこでまた考えついたのです。どうせなら調査をしよう、と。でも、家族連れですから、普通の調査は不可能です。ところが良くしたもので、その頃よく文化館に顔を出していたイサザ博士のTさんが加わり、変わり行く滋賀の、いや日本の(すこしおおげさかな)川に棲む生物の調査をどうやったら楽しくやって行けるかを討論した結果、自然の好きな者を集めたグループで移動し、若干の研究者を同乗させて、その専門分野について適度に調査する方法を考え出しました。1990年春のことでした。そして5月27日に第1回目の調査を行ってから今日に至るまで、ほとんど月に一度のペースで調査を行っています。

 メンバーは、発足当時よりは大所帯になりましたが、大人のメンバーは合計で10名程度で推移しています。顔ぶれは多彩で、元アルミ工で現在うどん屋の親父O氏、神社の権禰宜H氏、消防署員F氏、うどん屋の甥の警察官T氏、京都教育大の助教授B氏、アセス社員Y氏、医大生H君、などなど。途中から、この集団をネッツ(nets:滋賀の水生生物調査グループ)と命名し、調査で得られた標本やデータを琵琶湖博物館に寄贈することを規約として活動に弾みを付けることにしました。

ばっ、バケモノだぁ〜

 久多川での調査中、子どもたちが中州の岩をどけたところ、ヘビトンボのサナギがありました。幼虫はマゴタロウムシと呼ばれ、漢方薬に使われますが、姿は不気味で素手で掴むと噛みつく嫌な奴です。成虫も幼虫と変わらぬ不気味な顔をしていますが、まさかサナギまで不気味だとは知りませんでした。

 そんなわけで、東にダムができると聞けば「沈む前に調べておこ」、西に河川改修があると聞けば「いなくなる前に調べておこ」、南にきれいな川があれば「どんなもんが棲んでるの」、北に泉があると聞けば「そのうち涸れるから」といった具合に、休みになれば滋賀県中を駆け回っています。「調査」という堅い名前とノルマに縛られず、だから多少の手落ちはあるものの、しかし、出来る範囲で自然科学に寄与したいという願いを持って、活動しています。私の専門は魚ですから、採集や採集魚の同定には参加しますが、むしろ趣味を楽しむために記録写真の撮影を行っています。水遊び大好き人間の集まりですから、魚と水生昆虫についてはかなりのデータが集まりましたが、植物や鳥、陸生昆虫に弱いのが難点です。でも、記録の取り方や採集の仕方、標本の作り方さえ知っていれば、誰にでも出来るのが分布調査の良いところです。あとは、出不精をどうやって克服するか、なのです。

採集調査はハツラツと

 知らない間にパンツドボドボ。一心不乱の採集で至上の時を過ごすピーターパン症候群の大人たち

みんなで昼食

 ピクニックが発展したので、この風景は当たり前

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