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特集

[reminis to 1year at opening of new hall]

開館一年をふりかえって
 来館者アンケート調査を中心に

総括学芸員 嘉田(かだ)由紀子

120万人の方がこられました

 平成8年10月20日に開館以来、一年間に120万7444人の人たちが琵琶湖博物館の有料展示を見学しました。予想は60万人でしたから予想の二倍ということになります。(ちなみに滋賀県人口は130万人です。)この数字の中には、6歳未満の子供たちやアトリウム空間だけを利用する無料入館者は含まれていません。この特集では博物館の一年をふりかえって、来館者の動向をアンケート調査などから紹介させていただき、博物館の今後のあり方を考えます。


個人が65%、団体が35%


 図1には月別来館者数を示してあります。個人が65%、団体が35%ですが、開館直後は個人が多く、だんだん団体がふえております。一日平均の来館者数は4307人で、日曜・祝日は平均6500人をこえております。秋と春の旅行シーズンには団体が多く、個人が多いのは真冬や夏休みです。

 琵琶湖博物館の団体の場合には、観光団体とあわせて、学校や社会教育系の団体も多く、「観光地型」と「地域社会型」の両者の性格をあわせもっています。ここに琵琶湖博物館の社会的役割のひとつの特色があると思われます。「各界各層、多様な年齢層、多様な人たちに来て欲しい」という理念で建設してきたことから考えると、「観光地型」と「地域社会型」両方の特色をあわせもっていることは望ましいことでもあり、それだけ社会的波及効果が大きいとも言えます。

 学校団体の数は小学校326校、中学校115校、高校88校、盲聾養護学校44校となっており、小学校では三分の二が県内です。年齢が上がるにつれ県外が増える傾向にあります。高学年になると遠隔地への校外学習などが増えるからだろうと思われますが、中学校、高校では、京都や大阪、神戸など琵琶湖の下流域からの来館者が増えています。また聾養護学校が多いことも特色です。博物館の施設や展示内容がハンディキャップをもった人たちにわかりやすい実感、体験重視であることや、施設の充実とあわせて、来館時の対応の配慮、気配りなどへの評価があり、組織間の口コミによる評判をたどってくるものと思われます。
          

図1 琵琶湖博物館 月別来館者数


個人来館者のあらまし

 博物館の個人来館者のうち約80%が一般、約20%が学生です。図2〜5には、平成9年3月と8月におこなったアンケートの結果を示してあります。年齢の比較を見てみますと、3月時点では20代の層が多く、8月になりますと10代、40代が増えています。夏休みに家族で来られる方が増えたためと思われます。

 居住地をみると、3月では、県内54%、京都府下20%、大阪10%でしたが、8月には県内比率が35%に減り、大阪、京都がそれぞれ約20%を占めています。その他の地域を含めて遠方からの来館者が増えています。

 また、博物館に来たきっかけ情報を尋ねますと、友人や家族の比率が高く「口コミ」情報が重要であることがわかります。リピーターも、3月は16%、8月は24%となっており、しだいに増えていることもわかります。複数回来館する「その気様」が増えつつあることはうれしいことです。

図2 年齢の比較
図3 居住地の比較

図4 情報源の比較
図5 来館回数の比較


「ついで様」と「その気様」

 博物館に来ていただくきっかけ、動機はいろいろでしょう。博物館で何を得ていただくかも個人個人で異なると思います。それでもあえて、琵琶湖博物館では、来館者には大きく分けて二つのタイプがあるのではないかと考えています。旅行のついでに来た、というような*「ついで様」と、その気になってテーマを持って来館する「その気様」です。それぞれに目的が異なるわけですが、果たして両方の皆様に満足していただける展示や運営はどうあるべきか、工夫と知恵が求められます。

 「ついで様」は、旅の途中、あるいは遠足の途中で来られるということから、琵琶湖への関心を持ってもらうきっかけとして大切です。それだけに生きた魚を見ることができる水族展示への関心が高いようです。

 一方、「その気様」は、化石に興味があったり、歴史を知りたかったり、生物のことを調べたかったり、というテーマを持った人といえます。また観察会や研究会などに参加する人も「その気様」と言えるでしょう。

100万人目の来館者、尼崎の原さん(1997年8月19日)
来館者どうしの会話がにぎやか

 博物館の設置理念を実現するためには、「その気様」がしだいに増えてくることが大切です。博物館の来館をきっかけに、自分たちの暮らす地域や環境、ひいては琵琶湖への興味がひろがり、「フィールドへの誘い」へと発展していけたら何よりです。また地域の研究や活動などの中から集められた資料や考え方を博物館にもちこんでいただくことも大事です。博物館としては「発信」とあわせて、地域の皆さんからの「受信」が大切と考えています。

 「その気様」が増えれば増えるほど、展示内容の充実、更新、また情報センター、企画展示、レストラン、ショップの充実など、さらなる展開が求められており、そこではきわめて多様で、多くの「人の手」と「知恵」「知識」に加え、「人の心」がかかわる対応が求められています。

 琵琶湖博物館は、準備室時代に、「準備室なれど博物館」というスローガンのもとに、住民参加型調査や観察会などを幅広くおこない、また広報活動も早い時期に始めました。そのことが、開館直後から大勢の来館者に来てもらった理由のひとつともいえるでしょう。

 逆にこれからは「博物館なれど準備室」の精神で、成長、発展していくことが大切です。そこでは来館者の方、地域の方と博物館が「共に育つ」という姿勢が重要と思われます。

* この表現は博物館準備室の理事員だった三浦泰三さんの名づけです。


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