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特集

[Album of Lake Biwa from your memory and mine]

琵琶湖アルバムヘの思い

調査員 小笠原俊明
(河川工学)


 「あなたのお宅にアルバムはありますか?」と問われれば「あります」と答える方がほとんどだと思います。どのお宅にも大切にしておられるアルバムがあって、そのアルバムの中には家族の現在に至るまでのさまざまな出来事や生活の一瞬を切り取った記録が残されています。写真の中に写されている光景をたどっていくと点の集合が線になるように家族のあゆみを知ることができます。そして、その軌跡はそれを知っている家族だけではなく、家族以外の者にもうかがい知ることができます。

 琵琶湖博物館の開館半年前の一九九六年二月から三月にかけて、開館記念のプレ展示として前野隆資写真展「琵琶湖・水物語」を開催しました。前野さんは昭和初期から滋賀県の風土をとらえた写真を八万点以上も撮影してこられました。この展示会はその作品の中から百二十数点を選び、水とそれにつながる人の物語として構成したものです。前野さんの話をお聞きしながら写真を見ていくと、この作品群が琵琶湖とその集水域のアルバムそのものだと思いました。そして、家族には家族のアルバムがあるように、地域には地域のアルバムが必要であることを強く感じたのです。

 沖島の島民による宮が浜での地曳き網漁。ロクロを回しながら網をたぐりよせている。手前はとった魚を入れるために使うドンベ。
 現在、ここの漁場は近江八幡国民休暇村の水泳場としてにぎわっている。右の写真と比べると島影で同じ場所とわかるが、漁の場からレジャーの場へと、目を疑うばかりの変わりようである。
[近江八幡市沖島町]
<撮影:1956(昭和31)年8月4日 前野隆資>
<撮影:1997(平成9)年8月4日 古谷桂信>


 今回の企画展「私とあなたの琵琶湖アルバム」は前野さんの写真を中心に、県内の各地で昔の写真を持っておられる方を探し、聞き取りをしてまとめたものです。その点数は七〇近くになりますが、これらの写真を現在の同じ位置で撮影した写真と対比して展示します。新旧の写真を対比することで、その変遷がより鮮明に感じられるのではないでしょうか。写真から受け取るものは人それぞれに違うでしょうが、新旧の写真から、なくなってしまったものや変わらずそのまま残っているもの、また、なくなってはいないが形が変わってしまったものやできごとを発見されることでしょう。

 そこには、私たちの暮らしや身近な自然がここ三〇〜四〇年の間に大きく変わったことで、不合理として切り捨ててきたもの、変わらず今でも大切にしているもの、あるいは変化にあわせて変わっていったものが見えてくるのではないでしょうか。

 さらに、今回の企画展では烏丸半島の変遷も取り上げます。琵琶湖博物館の所在地である烏丸半島は、琵琶湖岸の利用の変化を象徴するように、ヨシ原、水田、養魚場、そして現在へとその姿を変えてきました。三〇〜四〇年前の烏丸半島のようすを写真でたどりながら、その変わり様を目の前で見てこられた地元の下物町の方々にその思いを語っていただきます。

 琵琶湖博物館の展示にも見られるように、どういった環境がよいのか、また環境というのはこうあるべきだ、といった環境観はその人の経験や立場によって幅広く異なっています。下物町の方々の思いを通して、皆さんや私たち学芸員の環境観がさらに深まるとともに、それがまた、皆さんと一緒に琵琶湖の環境を考える一つの機会となることを期待しています。

<撮影:年不明 石井田勘二(今津町教育委員会提供)>
 たらいに乗って洗い物。着物の前がぬれず、橋板から洗うよりも深くしゃがみ込まなくてもよかったので、よく使われた。現在、海津でたらいに乗って洗い物をする人を見かけることはまずないが、洗い場や橋板は他の地域に比べてまだ多く残っている。「今でもシーツや毛布なんか、湖ですすいで水切りするわね。」と森野美代子さん。
[マキノ町海津]
<撮影:1997(平成9)年6月24日 古谷桂信>


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