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「館長鼎談」

博物館協議会の委員として

2002年12月11日(水)
  琵琶湖博物館館長室にて
司会進行/用田政晴

琵琶湖博物館館長
川那部浩哉
琵琶湖博物館協議会公募委員
山本真知子 氏
琵琶湖博物館協議会公募委員
藤丸 厚史 氏
お二人をはじめ多くの方に考え、そして参加というより、ご自身でも進めて頂きたいものです。 普段なかなか直接足を運べない人が、気軽に参加できるような場を持っていただければと思います。 館内の混み具合などの情報提供も重要だと思いますね。

●協議会委員に応募して

司会 琵琶湖博物館には、ありかたや方向を助言して頂く協議会があります。先日その委員を公募し、山本さんと藤丸さんが二年間、その任に就かれることになりました。

川那部 有難うございます。応募のとき「この点は良くない」「このように変えたい」など、この博物館へのお考えもいろいろあったかと思います。そのあたりの、言わば動機からお願いしたいのですが。

山本 現在、能登川町立博物館で嘱託の学芸員をしています。この博物館職員の立場と琵琶湖博物館利用者の立場との両面から、意見を聞いたり言ったりする良い機会だと感じています。この博物館で聞いた話をうちの館に持ち帰って活かすことができたら、すばらしいですし。

藤丸 自分の職業以外に、社会や教育に関係する活動に携わりたいとの思いからです。彫刻や絵をやっているんですが、人に教えたり学ばせたり、逆に自分が学んだりすることを何かと。それに、滋賀県が好きなんです。琵琶湖があって、野があり、山が見えて、空が広い。人も良い。(笑)少しでも貢献できたら、というのが応募のきっかけです。

●ボストン子ども博物館での体験

川那部 確か藤丸さんは、子ども博物館とご関係があったんでしたね。

藤丸 大学生としてボストンにいたとき、地域のボランティアとして、子ども博物館や科学博物館でミュージアム教育に携わっていました。そこで学んだのは、博物館には感動や驚きがあることです。わざわざ説明をしなくても子どもたちは、みずからの力で感じとっていました。
 それに私自身も、子どもの驚きを自分でも感じるようになり、さらには、自然や物とふれあう驚きを子どもたちへ知らせたりするのが大切だ、と思うようになりました。とくに、自分が子どもを持つようになってはっきりわかりましたね。そこで日本の博物館でも、そういうことがもっともっとできると良いと、ずっと感じてきたわけです。

川那部 あの博物館は、おもしろいですね。以前に対談でも話したことですが、解説などは何もなく、子どもたちが思い思いに遊んでいるわけです。しばらくすると、例えば転がり降りてきた球をいちばん遠くまで行かせるには、どの角度で導くと良いかなどについて、お互いに議論を始めます。現象を見ているうちに、原理がおぼろげに判ってきたようでした。
 それに解説がないから、私自身もいろいろためしてみなければならないでしょう。そうすると、子どもが寄ってきて、きっと何度も何度も来ているんでしょうね、「こうして遊ぶんだ」と、実践してくれるのです。見つけ難い「ひも」を引張ったり。あれには感心しました。

藤丸 子どもたちが身体で感じてるんでしょうね。「覚えている」というべきかもしれませんけど。

川那部 そうなんです。それは子どもに限ったことではなくて、琵琶湖博物館のあちこちでも、来館者どうしが話し合い、教え合うようになってもらいたいと考えています。少しぐらい間違った説明でも、それは構わないんです。

●アフリカの自然・民俗調査から

川那部 山本さんは、アフリカのどこかへ行ってらしたんですね。

山本 カメルーンに、人類学の野外調査で行っていました。

川那部 私は東隣のザイール(現在のコンゴ民主共和国)の東端にあるタンガニイカ湖が主で、カメルーンへは残念ながら行ったことがないんです。友人の話では、すばらしい自然だそうですね。

山本 熱帯林のまっただ中にいたので、自然史博物館に住みこんでいるようでした。それに子どもから大人まで、自分たちなりの民俗知識を見事に持っておられるようで、それ自身が民俗博物館でもあります。まさに、「生きたデータが動いている」という感じです。(笑)

川那部 その自然と民俗とは、相互に関係しながら、いわば進化してきたものでしょう。琵琶湖博物館は、そういった関係の総体の歴史を知って貰うことを目的にしており、「ほんとうの博物館は野外の暮らしそのもの、建物の中はそれへのほんの入り口」と考えているのですが。

山本 そうですね。水族館という生きた資料室もありますし。

藤丸 館内のいろんなところから実際の琵琶湖が見えることも、そのつながりの表れですね。

●企画展のありかた

川那部 能登川町の博物館は、常設展示がなくて企画展示だけという、独特のやりかたですね。

山本 地元住民のみなさんに何度も足を運んでもらえるように、という方針から、博物館主催の企画展示が年七〜八回あります。準備も大変ですが、一か月そこそこで終わらせてしまうのはもったいないなあ、と思うときもあります。しかし常設展示も、ずっとそのままにしておくのは学芸員の怠慢ともいえるでしょうから、「手を加え品を変え」が必要でしょうね。(笑)

川那部 琵琶湖博物館の企画展は、準備にだいたい三年ぐらいかけるのです。それで、最初は年二回でしたが、今は年一回にして四か月ぐらい続けています。そのほかにもう少し小規模の、仮にギャラリー展示と呼んでいるものが数回あります。
 企画展示には必ず「展示解説書」を作るわけですが、終わってからの記録はなかなか作らないのです。しかし、展示したものだけではなくて、見えなかったものや問題点などを含めて、きちっとした記録を残していく。そして次に活かすことが大切なので、そのうち是非やろうと思っています。それに、終わった展示品そのものをさまざまに使う、例えば小型の巡回展示などのためにも、少なくとも重要なところは残しておくことも。博物館の向かいの広場に建物を作って、その中へ順次貯める。ガラス張りにすれば、一部を外から見ることも出来ますしね。

山本 そういうような、知識の引き出しのようなものに、博物館自身がなると素晴らしいですね。

川那部 企画展の内容ややりかたなども、一般のかたがたももちろんですが、協議会委員になって下さったお二人には、いろいろ率直な意見や提案をお願いしたいものです。

●して欲しいこと、やって行きたいこと:
「誰でもどこでも博物館」を目指して

藤丸 琵琶湖博物館は、「学術と出会う、知的な世界への入り口だ」と思います。琵琶湖の文化や歴史、それに自然や生きものがふりまく神秘性などを、大人も子どももいっしょになって、楽しく学べるところとしてね。宣伝もさらに必要だと思います。地元の先生方にも、子どもたちを授業の一環として連れてくるだけではなくて、家族と一緒に見に行くように紹介してほしいですし。
 それに、内部が混んでいるかとか、駐車場に空きがあるとか、情報がいつも取れると良いですね。また、食事の場所も問題ですね。

川那部 むかし別府の高崎山でサルの数を、「只今零匹」などと知らせていたようにですね。(笑)なるほど。

藤丸 そして何度も来ているうちに、もっと深く学んでみようと、自然に思える仕組みを創ることが博物館側にも必要でしょう。

山本 大阪市立自然史博物館では、駅ビルの中で夜に社会人向けの講義がされているそうです。近ければも通いたいぐらいで、そういう企画があればすごく良いなと思います。小・中学校週休二日制になって、博物館の機能が見直されていますが、それと同時にこういう大人向けのものが、琵琶湖博物館にもぜひ欲しい。
 資料の貸し出しもお願いしたいのですが、それと同時に人の出前出張というか、移動講座などをもっとして頂いて、普段なかなか直接足を運べない人が、興味を引けば気軽に参加できるような場を作ってほしいと思います。

川那部 今のようなことを、お二人をはじめ多くの方に考え、そして参加というより、ご自身でも進めて頂きたいものです。近い将来には山本さんにも藤丸さんにも、琵琶湖博物館でそして各地域で、活動して頂きたいと念願しています。

山本 是非。そうなれば願ったり叶ったりですから。
 それから、日本語以外での博物館案内が欲しいですね。英語はあるんでしょうが、例えば滋賀県と関係の多いブラジルの、ポルトガル語など。

川那部 三つ折のリーフレットは、朝鮮語・中国語・英語・ポルトガル語とあるんですが、少し詳しいのはまだです。そのうち英語のは作りますので、取り敢えず許して下さい。
 琵琶湖博物館が公開されて六年経ちます。十年目を目指して計画を立て、そのあと設計にかかります。目指すのは「誰でもどこでも博物館」です。その詳しいことは、折々にお知らせ致しますが、是非ご意見をお寄せ下さい。特に現状に対する批判的で積極的なご意見をね。宜しくお願い致します。
 今日は、ありがとうございました。

(終了)  


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