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−研 究 最 前 線−

南湖で増える水草〜吉兆か凶兆か?〜

琵琶湖博物館 主任学芸員 芳賀 裕樹
琵琶湖博物館 主任学芸員 芦谷美奈子
琵琶湖博物館 学 芸 技 師 大塚 泰介
琵琶湖博物館 主任学芸員 松田 征也
茨 城 大 学 助   手 中里 亮治


 琵琶湖南湖で水草が増えている現象について、私たちのグループは2001年から調査を始めています。研究テーマは3つ。「水草はどこまで増えているか」「この状況は異常か」「将来にどんな影響があるか」。まだ始まったばかりの研究ですが、最初の2つのテーマについて興味深い結果が出はじめています。
図1魚群探知機調査で明らかになった
水草の分布範囲(2001年7月末)
 まず現状ですが、2001年夏の水草帯の面積は約32km2だったことが魚群探知機を使った調査でわかりました(図1)。この面積は南湖全体の57%に相当し、すでに南湖の半分以上が水草で覆われています。2002年の調査結果はまだ分析中ですが、前年に水草がなかった場所でも分布が確認されたことから、面積は若干拡大していると思われます。ただし、2倍とか3倍になったわけではありません。2002年は水草の大量発生が話題になりましたが、水位低下で目立っただけのことで、水草が南湖の広い範囲にあるのは、もはやあたりまえの状態と考えられます。
 ではこの状態は異常でしょうか? そうとは言い切れないようです。水草が増加する前の分布面積は0・6〜9・4km2でした(1953〜94年)。ところが、1942年には南湖のほぼ全域が水草で覆われていたと、京大大津臨湖実験所(当時)の山口久直さんが記録しています。当時の状態が南湖の本来の姿だとすると、53年から94年までの水草の少ない状態の方が異常だったとも考えられます。  なぜ40年間も水草の少ない状態が続いたのでしょうか。これは現在取り組んでいるテーマのひとつですが、南湖の濁りが原因ではないかと考えています。水が濁ると湖底に十分な光が届かないので、水草が成長することができません。濁りの原因となるのは土砂の巻き上げと植物プランクトンの増加です。水草が増加し始めた時期は、琵琶湖総合開発による工事が一段落した時期と一致しますので、工事による土砂の巻き上げが減ったのでは、と考えています。また、南湖の富栄養化指標として全リンの濃度の推移を見ると、1980年代から低下を続け、90年代に入ると低下のテンポが速まっています。このため、植物プランクトンが減って、水が澄んできたことも考えられます。いずれにせよ、南湖の環境改善が水草の増加をもたらした可能性があると私たちは考えています。
堅田―雄琴間に見られた群落
 興味深いのは、増加している水草が琵琶湖にもとからいた種類だということです。外来種のオオカナダモやコカナダモは主役ではありません。量の多い順に並べたらオオカナダモは4位あたり、コカナダモはもっと下になるでしょう。1970〜80年代にオオカナダモやコカナダモが大増殖して問題になりましたが(実は在来種と入れ替わっただけでしたが)、今回の現象はそれとは全く違うのです。
 もちろん、水草がむやみに増えれば私たちの生活にも影響を及ぼします。私たちの観測船も水草がスクリューに巻き付いて立ち往生することが何度もありました。それでも、いたずらに水草を敵視することなく、増えた意味を色々な面から評価して、上手なつきあい方を見つけることが大切だと、私たちの研究グループでは考えています。



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