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交流センター主任主事
西垣 亨

特集

今こそ博物館で環境学習を
−総合的な学習における博物館利用−


これは何でしょう?
この写真は、卵から産まれる直前の、サカマキガイの赤ちゃんです。博物館に流れる小さな水路の中でさえ、こんなにかわいい生き物たちがたくさんいるのです。
身近な自然の中へ、もっと目を向けてみませんか。

縮まる学校と博物館との距離

 新しい教育課程のスタートから半年がたちました。中でも「総合的な学習の時間」については、カリキュラムの開発やその実施方法について、先生方もずいぶん頭を悩ませてこられたものと思います。
 これまで博物館は、学校教育にとって「利用しにくい」場所だといわれてきました。その原因は、学習目的・学習形態の違いや物理的な距離によるものでした。しかし、「総合的な学習の時間」の創設によって、急速にその距離が縮まりつつあるといえます。その理由は、総合的な学習が持つ、次の3つの特徴にあります。
 (1)テーマ設定から課題解決に向けての学習の流れが、生徒の自主性・自発性を基本にしている
 (2)自然体験などの実体験を通して学ぶことが重視されている
 (3)柔軟な授業時間設定が可能である
 琵琶湖博物館は、身近な自然体験や、琵琶湖の歴史文化に触れる体験を通して、そこから子どもたちが自由な発想で学習していくための「きっかけ」や「材料」を与える場所です。
ですから、(1)(2)の特徴は、これまで博物館で行われてきた体験学習の形態そのものなのです。また(3)によって、日常の授業の中で博物館を利用することも可能になったといえます。
 実際に、博物館が学校向けに行う体験学習の数は増加しています。
 琵琶湖博物館を、学校団体として利用する児童生徒数は年間約8万人にのぼりますが、昨年度は、その1割の子どもたちに体験学習を実施しました。そして、総合的な学習が本格実施された今年度は、グラフでもわかるように、学校団体総入館者数の増加とともに、体験学習を希望する学校数がかなりの勢いで伸びています。(グラフ1)
 この理由は、総合的な学習の一つの柱である環境学習の場として、博物館を利用する学校が増えたことによるものです。また学校によっては、博物館を「地域にある施設」として、地域学習の中で活用するところもあります。


琵琶湖博物館での環境学習

 琵琶湖博物館で多く実施しているのは、琵琶湖やそのまわりにすむ動植物を出発点とした体験学習です。琵琶湖から採取したプランクトンを観察しながら、琵琶湖の水環境、つまり自分たちの飲み水のことを考えたり、湖岸に生えているヨシで笛作りを楽しみながら、ヨシ帯にすむ魚や鳥たちに想いを馳せたりしています。

 博物館での自然体験を、どのように発展させ学習していくかは、興味や関心によって自由に考えることができます。例えば、自分で釣った魚を解剖する実習では、魚の体のしくみについて追求していってもいいし、食性から食物連鎖の学習へつなげてもいいし、外来魚の問題や命の尊さについて学んでいくこともできます。博物館での体験はただのきっかけにしてもらえればよいのです。そして博物館にあるたくさんの展示物は、子どもたちが学習を進める上でのよい材料になります。
また、今年度、学校からの希望が大変増えているのが、琵琶湖の水環境についての講義の依頼です。(グラフ2)
 県内だけでなく、淀川水系にある学校からの希望が多く、「自分たちの飲み水についてもっと意識させたい」という先生方の熱意が伝わってきます。

 次に、4月から8月上旬までに博物館で行われた教員研修の数を、昨年度同時期と比較しました。(グラフ3)
 県内県外をあわせて昨年の2倍近くに増えていることも、総合的な学習の実施と関係があると考えています。研修内容は、学芸員や博物館教員による水生動物・植物に関しての講義・実習が主ですが、やはり自然体験を重視するようにしています。また、8月7日から一泊二日で行われた「自然調査ゼミナール」(県中学校教育研究会理科部会主催)では、県内8つの中学校から参加した48人の生徒と15人の先生方が一緒になって研修されました。植物・魚・プランクトン・貝・水草の5つのグループに分かれて、採取した素材をもとに様々な体験実習を行いました。
 琵琶湖博物館としては、今後館独自の教員研修も開催し、一人でも多くの先生方に博物館の活用方法を知っていただくと同時に、様々な自然体験の中から学習のヒントをつかんでもらえたら、と考えています。


これからの環境学習

自然調査ゼミナール
生態観察池での実習(守山高校) 自然調査ゼミナール

 これまで環境学習というと、ゴミ問題や水質の問題など、「〜問題」とつく学習から入っていくことが多かったように思います。もちろんそれは大切な学習ですが、例えば琵琶湖に一度も触れたことがない子が、琵琶湖の水質について調べたとしても、なかなか実感として捉えられません。また環境「問題」学習では、いつも視点が「人間の立場」から見たものになってしまったり、環境の悪いところを探すというマイナスの学習のみになってしまったりという、弊害もおこりやすいといえます。
ハスの葉に水をかけてみたり、ヨシの茎についている微生物を顕微鏡で見たり、河原の石の下にすんでいる小さな昆虫を観察したりすると、ほとんどの子どもたちは驚きの声を上げます。自然を身近に感じた時の、この驚きや感動が、環境学習の出発点だと思うのです。頭の中の知識だけではなかなか学習のきっかけにはなりません。体験として知ることが、子どもたちの自由な発想を生み出す原点になり、広がりのある学習へ発展していくことにつながるのだと思います。琵琶湖博物館で行う環境学習も、この驚きや感動を大切にしていきたいと考えています。
最近「学校近くの川を調べることから学習を始めたいが、水質や水生生物を調べる方法について教えてほしい。」という学校からの問い合わせが増えました。子どもたちの笑顔あふれる環境学習になるよう、こんなところからも学校との連携を深めていきたいと考えています。




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