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 Goin' at Field! フィールドへ出よう!

「私たちのホタル」10年調査から

水と文化研究会
小坂育子

水と文化研究会
田中敏博

ホタルダス参加者シール

 1989年のはじまり

 水と文化研究会が発足したのが今から10年前の1989年。琵琶湖といえば、「BOD」とか「水質」とかオウム返しに反応がかえった時代、私たちは「何かちがう」という思いから水と文化研究会の活動を始めました。専門家や行政から教えてもらうだけでなく、自分たちで、水の歴史や文化を調べてみることが必要だろうと考えたのです。水の使い方、排水の流し方、子どもの水遊び、農業の水、水害や雨乞いのこと、水の中の生き物調査、いろいろなテーマが考えられました。

 調査・研究といえば、どこかの専門家がやるもの、私たちの日常にはたいして関係ないと思っていた人たちがほとんど。そんな難しい事をいかにやさしく、そして何よりも楽しく、誰でも参加できる魅力ある調査にできるか、ということが世話役の頭を悩ませたことでした。そして最初のターゲットとして選ばれたのがホタルでした。ホタルが選ばれた理由は、(1)日本人には馴染みがあり親しみやすい、(2)夜光ってくれるので数えやすい、(3)水環境の指標になり、(4)豊富な文化的背景があり、(5)人びとの関心も深い、ということからでした。

 「ホタルはきれいな水が好き」「最近は水辺の汚れからホタルがいなくなった」、そんな伝聞情報を「本当にそうなの?」と疑問をもちながら、一方で新しい情報づくりをするため、忘れかけていた水辺を見つめ直す調査が始められました。名付けられたのが、アメダスにちなんだ「ホタルダス」。

ホタル観察会を楽しむ参加者たち

 どのようにして

 身近な事を調べるのは、実はたいへんむずかしいものです。それは私たちが「見えている」と思い込んでしまっているからかも知れません。しかし今、少しずつ、「見えていなかった」ことに気付きはじめたのです。ホタルの10年調査は、多くの人が気にしていたことをたくさん引き出すことができました。

 水環境を調べるというといろんな計測器具が必要になりますが、ある生き物がいるかどうかは、誰にでも調べやすい。「ホタルダス」では、まずホタルカレンダーと観察場所を記入してもらう調査書をもとに、世話役の知り合いに声をかけ、新聞で参加希望をつのり、パソコン通信の仲間にも呼びかけ、その即時性と双方向性をフルに活用して観察調査を始めました。観察期間が5月の終わりから7月までという限定されたものであり、仕事をしている人でも夜なら観察に参加できる(仕事の帰りでもできる)などの利点もありました。夜、出かけることがほとんどなくなった今、それはちょっとした家族との楽しみの外出になったということもあり、予想をこえる参加者からの報告がかえってきました。

 毎年の観察記録と感想文は「私たちのホタル」として出版し参加者に届けることができました。1号から10号まで2000頁ほどになりました。自分の観察記録を毎年本の中に見付けることができたことも長く続いた秘密かもしれません。単なる「調査地点」が「わたしの調査地点」に変わってきて、おおいに盛り上がりました。これまで10年間で観察のべ日数4万5283日、3456人の眼がホタルに向けられました。

「私たちのホタル」1〜10号

 博物館にも展示され

 こうして続いた「私たちのホタル」10年間調査は、家庭でとじていた私たちの関心を、社会や地域の水環境へ誘い出す大きなきっかけとなりました。さらに、それぞれの深層心理にあった思い出と直感が溢れ出てきて、そこから個人の歴史が多く語られました。身近な生き物が、こんなに個人や個別の地域文化のなかで大きく位置付けられていたのかと驚きでした。

 琵琶湖博物館のC展示室、「湖の環境と人々のくらし」のなかでも私たちの調査の記録が紹介されています。

 身近な水環境について、住民側からプランを出すためには、こうした住民の目と手と足による調査研究が不可欠です。そこでの専門家との共同体制が重要になってきます。「私たちのホタル」10年調査は、シロウトとクロウトが協力する大切さを教えてくれました。そのような場面での博物館の大きな働きもうれしいものでした。

常設展示ホタルダスコーナー

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