Go Prev page Go Next page

●研●究●最●前●線●

古琵琶湖層の火山灰はどこから?

学芸員 里口保文(火山灰層序学)

地層中にある火山灰

 琵琶湖は400万年の歴史を持つと言われています。これは琵琶湖周辺の地層を細かく調査し、その結果を検討したことからわかってきました。その調査の基本となったのが火山灰層を鍵層とすることでした。

 鍵層とは、互いに離れた場所にある地層をつなげる鍵になる地層の事を言います。火山灰は火山の爆発的な噴火活動によって火山から拡散し、いろんな場所にほぼ同時に降るので、離れた場所で同じ火山灰を見つけることは、その火山灰のある地層がほぼ同じ時期にできた事を意味します。現在、私たちが住んでいる周りの環境を見渡してみても、山や川、湖などいろんな環境があり、異なる環境ではそれぞれ違う見かけをした地層が作られます。ですから、離れた場所にある地層の見かけが違っていても、同じ火山灰があれば、その地層がほぼ同じ頃にできたことがわかります。

写真1 古琵琶湖層群の五軒茶屋火山灰層。下部〜中部にかけて (撮影:里口保文)

五軒茶屋火山灰層

 写真1を見て下さい。これは石部町五軒茶屋にある五軒茶屋火山灰層です。火山灰は普通白っぽい色をしています。この火山灰層は他の火山灰層とちょっと見かけが変わっていて、白い火山灰と赤〜紫色の火山灰からなります。こういった、見かけに特徴のある火山灰は同じものを見つけやすい。しかし、同じ火山灰かどうかは見かけだけではなく、それぞれの火山灰の性質を調べて、より厳密な検討を行います。写真2と写真3を見て下さい。これらはそれぞれ大阪府南部と千葉県房総半島で見つかった同じ火山灰層です。大阪府南部はここから直線距離で80kmくらいですが、房総半島は500km以上離れています。

 火山灰は火山の爆発的な噴火で広域に拡散します。その噴火の規模が大きいほど火山灰が遠くまで飛びます。ですから、この五軒茶屋火山灰を噴出した火山の噴火は、少なくとも六〇〇qの範囲に火山灰を降らすような大きな規模の噴火だったと言えます。この五軒茶屋火山灰層は大阪などの近畿〜東海地方や、房総半島、新潟地域で見つかっていて、分布範囲などの研究から噴出した火山は岐阜県北部と推定されています※。

写真2 大阪府南部にみられる大阪層群の福田火山灰層。全景。スケールは1m (撮影:里口保文)

写真3 千葉県房総半島にみられる上総層群のKd38火山灰層 (撮影:里口保文)

古琵琶湖層の火山灰はどこから?

 古琵琶湖層には130以上の火山灰が知られています。これらの火山灰のうち五軒茶屋火山灰のように岐阜県北部からきたものや他に九州から来た火山灰など、いくつかについてはどこから来たかがわかっています。しかし130もの内のいくつかですから、ほとんどがわかっていないといえるでしょう。これから火山灰一つ一つについてもっと詳しい研究が必要です。

 それにしても、岐阜県北部でも100km以上離れているので、過去数百万年間に100km以上離れた場所から滋賀県周辺に火山灰を降らすような火山の活動が何度もあったことは驚きです。

※吉川周作・里口保文・長橋良隆(1996)第三紀・第四紀境界層準の広域火山灰層―福田・辻又川・Kd38火山灰層.地質雑,102,258―270.



表紙の写真

(アラカシのプレパラート)
 なんと、よこ幅が1mmの世界なのです。アラカシの木を薄く切ったプレパラートを色で染めて、電子顕微鏡で撮影したものです。
 模様の美しい木を選んでみました。たくさんの穴がありますが、大きい穴は実は水が通るところなのです。
(撮影:布谷 知夫)

-5-

Go Prev page Go Prev page Go Next page