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魚類標本

琵琶湖博物館魚類標本登録・管理マニュアル 1998年度改訂版

Instructions for the registration and management of the fish collection in Lake Biwa Museum
- Revised version in 1998 financial year -

中島経夫*・濱口浩之**・木戸裕子**
Nakajima T., Hamaguchi H. and Kido Y.

* 滋賀県草津市下物町 1091 滋賀県立琵琶湖博物館
E-mail: nakajima@lbm.go.jp
** 滋賀県草津市下物町 1091 滋賀県立琵琶湖博物館内 株式会社新州

 琵琶湖博物館魚類標本の充実と,円滑な管理をはかるために,琵琶湖博物館魚類標本登録・管理のマニュアルを,昨年度著した(中島他,1998).その後,魚類データベースの画面変更,魚類標本の収蔵庫内での配架の変更などにともない同マニュアルを改訂する.

1.採集

1-1. 採集データ

採集にあたっては,以下の項目を最低限のデータとして,採集地点毎に記録しておく.

1-2. 標本の現地での処理

小型魚類については,採集地点毎にビニール袋にいれ,酸素を充填して生きたまま持ち帰る.あるいは,採集地点毎に10%中性ホルマリンで固定し,プラスチック製2リットルT型瓶に保存する.ビニール袋,T型瓶には,必ず採集地点を採集日と地点番号(その日の通し番号)をマジックで記入するとともに,中に同データを鉛筆で記入した耐水紙を入れておく.(記入例“19970823a”:1997年8月23日のa地点採集)
生きたまま持ち帰ることができない大型魚類については,できるかぎり腐敗の進まない方法をとって持ち帰る.

1-3.採集に必要な道具

 採集用具のほかに,酸素ボンベ,ビニール袋,輪ゴム,中性ホルマリン原液,2リットルT型瓶,都道府県別メッシュマップ,フィールドノート,油性マーカー,鉛筆,耐水紙などを用意する

2. 標本受入から処理

2-1.採集標本の受入

 採集標本を受け入れる際には,魚類標本受入カードに必要な事項を記入してもらう
最低限,以下の6項目を確認する.

(a) 標本管理者 (b) 採集地 (c) 採集日 (d) 採集者 (e) 採集法 (f)固定法  (g)保存法

 生きている標本については,目的に応じて固定する.一般には,10%中性ホルマリンで固定する.採集地点ごとに複数の種が混在しているので,それらを分類し,同定する.魚類以外の標本については,データを添えて,別に分けておく.

2-2.標本の固定

(a) 固定の注意点

図1 DNA分析用の標本瓶  採集地ごとに分けて,大きめのビンに10%中性ホルマリンを入れ,魚を入れて固定する.
固定後,標本は分類,同定し,種類毎に所定の標本瓶に入れる.登録まで,採集地点毎にまとめて,データを記したメモとともに,コンテナに一時的に入れておく.

(b) DNA分析用標本の固定・保存の仕方

 大きめのビンに特級99%エタノール液を入れる.分類,同定された魚をこの容器に生きたまま入れ固定する.適当な大きさの標本瓶に移し,特級99%エタノール中に保存する.フタ等に採集地のデータをメモしておく.アルコール固定の目印として,瓶と蓋の境目に赤いビニールテープを巻いておく(図1) 大きな標本では,新しいメスで20-30mm角の肉片を切り出し,特級99%エタノールで固定する.もとの魚体は,10%ホルマリンで固定し,保存する.この場合,先に登録作業を済ませる.登録番号は,魚体と肉片についてそれぞれ付ける.肉片は,魚体から分離した形で登録する(3-2.標本の分離を参照).
なお,70%アルコール保存標本については,目印として瓶と蓋の境目に黄色いビニールテープを巻いておく.

(c) 10%中性ホルマリンの作り方

 ホルマリン原液用のポリタンクに,ヘキサメチレンテトラミン450ccとホルマリン原液1斗缶分を入れ,安定するまで数十分間放置する.ホルマリン用のタンクの上下2箇所に,10%になる位置にあらかじめビニールテープで印をつけ,その下側のテープの下端までホルマリン原液を入れ,上側のテープの下端まで水道水を入れて,10%中性ホルマリンを作る

2-3. 寄贈・寄託標本の受入

 データが明瞭で,琵琶湖博物館の収蔵標本にふさわしいとみなせる標本を,琵琶湖博物館資料受入要領に従い受け入れる
同一容器に複数の種が混在する場合は,採集標本と同様に分類し,同定する.

2-4.保存容器

(a) 保存用標本瓶

 使用される標本瓶は,8~900mlまでの硝子瓶(マヨネーズ瓶70,140,225,450,900,ネジ口瓶SV8,10,15,20,30,100,150)を使用する.体高の大きい標本に限り,T型1リットルプラスチック瓶(広口T型瓶-1リットル)を使用する.標本瓶はコンテナ(三菱化成,ヒシコンテナ40-S)に収容して配架するのでこの高さを超えてはならない

(b) 900ml瓶に入らない大きな標本

 琵琶湖博物館魚類標本データベース(以下データベース)への登録番号を先に決めるか,先に登録を済ませる.サラシ布に登録番号を付し,タグとしてガンタッカーで打ち込み(図2),20リットルタンク(BB型角形広口瓶-20リットル)に種ごとに保存する.20リットルタンクに収容できない時は,標本の大きさに応じて大型タンクまたはドラムタンク(オープンタイプPOM-220,POM200,POM120,POM60)に保存する

(c) タグ用サラシ布の作り方

図2 タグの打ち方  2cm×12cmのサラシ布をあらかじめ用意しておく.この布に,頭 5cm 程度開けて墨汁で登録番号を書き,完全に乾かす.その後,この布を5%コロジオン液に浸して再度乾かす. 標本の尾柄部に,脊椎骨を避けてガンタッカーで登録番号を付したサラシ布を打ち込む.
(ガンタッカーの針先にサラシを通し,さらに魚体を貫いて引き金を引く.)

(d) 乾燥咽頭歯標本の作成,保管の仕方

 魚体を傷つけないように鰓蓋をめくって咽頭歯を取り出す.次に,取り出した咽頭歯をクリーニングし,アルコール,アセトンの順に浸けて脱水させる.脱水の済んだ咽頭歯は,風通しの良い場所で風乾する.乾燥した咽頭歯は,シール付ポリ袋(ユニパックB-4)または密閉式プラスチック容器(HiPack S12)に入れて保存する

3.標本の登録

3-1.標本の登録の実際

 データベースに登録する.Macintosh端末での登録方法を示す

3-2.標本の分離

 登録番号は,基本的には,標本瓶に対して付けられている.標本瓶に多数の標本が入っている場合,研究用に標本の個体を特定して,標本を分離することができる.この時,分離した標本には,新たな登録番号を付け,前番号のフィールドに,分離前の登録番号を入力し,どの標本から分離したかを記録しておく
また,個体標本から,部分(例えば咽頭歯,DNA分析用肉片)を分離した時も同様にする.

3-3.同定コードの付け方

 魚類標本の同定コードは,上位コード(9桁)と下位コード(11桁)の20桁で構成される.上位コードで綱から科までのタクサを表し,下位コードで亜科以下のタクサを表す.上位コードについては,Eschemeyer(1998)編集の“CATALOG OF FISHES”に従い,分類コードを割り振った.下位コードについては,同定作業に伴いながら,コードを割り振るが,同定された亜科,属,亜属,種などのタクサについては,登録順にコード番号を付ける.ただし,コイ科以外は亜科のコードは付けない

  上位コードの最初の2桁“90”は,改訂された分類コードを表すもので,タクサを表さない.それより下位については,上位の桁から順に以下のとおりにコードを割り振る.

上位コード 綱(1桁),目(2桁),亜目(2桁),科(2桁)
下位コード 亜科(2桁),属(2桁),亜属(1桁),種(2桁),亜種(2桁),型あるいは品種,変異など(2桁)

3-4.ラベルの作成,貼付

図3 標本瓶のラベル

細明朝体18ポイントで,登録番号,分類コード,学名を入力し,印字する.但し,標本瓶が小さい場合は12ポイントで印字する.
印字されたシートをカッターで切ってラベルを作成する.
切ったラベルは,標本ビンの上から1/3位の高さに糊で貼付する(図3).
標本瓶の中に,登録番号をインディアンインクで記入した10mm×30mmの大きさの耐水紙(株式会社シオザワ ニューSベランN)を入れる.
乾燥咽頭歯のラベルは,咽頭歯と一緒にシール付ポリ袋(ユニパックB-4)または密閉式プラスチック容器(HiPack S12)に入れる.ただし,大型咽頭歯標本には,直接登録番号をインディアンインクで記入する.

4.収蔵

4-1.配架

(a) 一般標本の配架

 登録が終わった標本は,種単位でコンテナ(三菱化成ヒシコンテナS-40)に納め,所定の棚に配架する.標本瓶に収容できない中型標本は,20リットルタンク(BB型角形広口瓶-20リットル)に収容し,所定の棚に配架する.配架は分類コード順とする.20リットルタンクに収容できない大型標本は,大型タンクに収容する.乾燥咽頭歯は種単位,登録番号順に密閉式プラスチック容器(HiPack S12)に入れ,亜科ごとに分けて咽頭歯用棚に収蔵する
コンテナ,20リットルタンク,咽頭歯用ポリ容器には,コンテナラベルを貼付する.

(b) タイプ標本の配架

 タイプ標本については,共栓擦り合わせガラス瓶に入れ,タイプ標本であることを明記し,赤のビニールテープを瓶に巻いて目立つようにしておく.一般の棚には配架せず,施錠できるタイプ標本用の棚に収蔵する

4-2.コンテナラベルの作り方・貼り方

(a) コンテナ・20リットルタンク

 細明朝体24ポイントで,学名,分類コード,最初の登録番号を印字し,コンテナラベルにする
コンテナまたは20リットルタンクが満杯になった時には,最後の登録番号を貼付する.
コンテナのラベルは前後の面,取っ手の下2cm程の位置に糊付けし,タンクのラベルは前面のみ,上から約12cmの位置に糊付けする.それぞれのラベルは,重ねて透明のテープを貼り補強する(図4).
図4 コンテナのラベル

(b) 咽頭歯用プラスチック容器

 図5 密閉式プラスチック容器  TEPRA(幅6mm,白のテープ)で学名,同定コード,最初の登録番号を印刷する.学名のテープは,容器のフタ上方と側面に貼り付け,フタの学名の下に同定コードと登録番号を貼る.容器が満杯になったら最後の登録番号をその横に貼る(図5).

4-3. 大型タンクでの保存

 大型タンクでホルマリン固定された標本は,70%アルコールの入ったドラムタンク4種類(オープンタイプPOM-220,POM200,POM120,POM60)に移し変えて保存する.標本の大きさに見合うタンクに登録番号順に収容し,タンクの外側に,収容した標本の登録番号と学名を記入したラベルを標本ごとに貼付する.このラベルは,コンテナラベルと同じ要領で作成する.ただし,分類コードは印字しない

5.管理

5-1.管理

 登録,配架された標本は,魚類標本収蔵庫管理者(以下,収蔵庫管理者)の許可なく移動することはできない.コンテナなどからの標本の出し入れは,収蔵庫管理者が行う.収蔵庫管理者は,収蔵庫責任者の指示に従い,学芸職員の要求に速やかに答え,要求標本を収蔵庫より取り出す.学芸職員は,当該標本の管理者(以下,標本管理者)の許可を得て,魚類標本を使用することができる
収蔵庫管理者は,最低限,アルコール保存標本については1年に1回,ホルマリン保存標本については2年に1回,液漏れと標本の所在をチェックする.液漏れなどをチェックした標本は,データベースの確認年欄に年月を“/”で区切り半角で入力,標本確認欄に確認内容を記入する.

5-2.貸出

(a) 博物館職員への標本の貸出

 標本を研究等のために収蔵庫から持ち出す場合,所定の手続きをとる

(b) 外部研究者への貸出

 外部の研究者等が使用する場合,琵琶湖博物館資料貸出要領,琵琶湖博物館魚類標本登録・管理マニュアルに従い,学芸職員を通じて標本の貸出しを行う

(c) 貸出期限のチェック

 収蔵庫管理者は,貸出期限をチェックし,期限切れの貸出標本について返却を学芸職員に要求する.再使用する場合は,期限延長を行い,データベース貸出記録欄の期限を変更する

5-3.登録標本の検索

 標本は,分類コード順に配架されているので,種類毎の標本は直接,収蔵庫の中で探すことができる.それ以外の項目で標本を探す場合は,データベースで標本を検索する.検索の方法は以下の手順に従う

5-4.データベースのダウンロードの仕方

a) データベースのダウンロードと編集方法
b) 同定コードのダウンロードと編集方法

6.一般的注意事項

6-1.薬品の取扱

 ホルマリンは直接触ると肌が荒れるし,吸入するとのどを痛めることもある.ホルマリンやホルマリン標本を扱う時には,換気に留意し,ビニール手袋等を使用する.皮膚についた場合は,直ちに水で洗い流す

6-2.作業場所について

 基本的に,ホルマリンやアルコールなどの薬品を使う作業については液浸収蔵庫内で行い,データベースへの入力作業は動物標本制作室で行う

引用文献

平成10年度魚類標本データベース管理者 中島経夫
平成10年度魚類標本収蔵庫責任者 中島経夫
平成10年度魚類標本収蔵庫管理者 主任 濱口浩之 補助 木戸裕子
標本管理者 各標本管理ラベルに入力されている.