琵琶湖博物館について

設置の目的

琵琶湖はその面積において、滋賀県の6分の1を占めるに過ぎないが、県民も県外の人びとも、もっと大きいもののように感じているのではないだろうか。琵琶湖は、県民の生活の中心であり、その象徴であると同時に、またその自然は、日本の水景の代表として、多くの国民に親しまれている。さらにこれは、日本最大の水資源でもある。

この琵琶湖はまた、世界でも有数の古い湖の一つである。数百万年にわたる生物進化の歴史を秘めたこの湖には、極めて多様な生物が数多く棲息している。またその中には、世界中でこの湖にしかいないものも多く、したがって国際的にも広く注目されてきている。そしてこの琵琶湖の周囲には、古い時代から人びとが住みつき、農耕や漁労を中心にこの地域独自の文化を築き上げ、またその生活の中から数多くの文化財を生み、かつ守り育ててきた。

このように、琵琶湖は多面的でしかも大きい価値を持つ湖であり、国民全体いや世界の人類にとっても重要な資産であり、すなわち、自然的かつ文化的な遺産でもある。第2次世界大戦後の高度経済成長は、この地域にも、急速な工業化、都市化をもたらし、一面で地域での生活を向上させ、豊かな物質生活を実現してきた。しかしそれと同時に、環境に大きい悪影響を与え、また人間の精神生活に関しても必ずしも良好でない状態をもたらしていることは、控えめに見てもいまや明らかである。しかも、その変化の実体の解明はなお部分的であり、多方面にわたって未知の問題が、数多く残されたままである。

私たちの生命・生活と文化を、真に良好な方向に築き上げ、またそれを次世代への贈り物にすること、いや、「環境を含むわれわれの生活自身が、未知の世代からの、いわば<預かりもの>である」との考えは、今や世界共通の認識となってきている。
この認識の上にたって、琵琶湖の多方面な価値をあらためて解明し、それと人間の生活とのかかわりかたを歴史的に考え、これからの私たちの湖とのつきあいかた、すなわち新しい時代にふさわしい湖と人との共存関係を探り、新しい文化の創造を模索していくことは、現在の私たちにとってもっとも重要な課題である。そしてこれは、琵琶湖とその周辺のみならず、世界各地での共通の大きな課題となっているものである。

琵琶湖博物館は、湖と人との関係を過去にさかのぼって研究・調査し、資料を収集・整理し、その成果をもとに県民とともに考え、今後の望ましいありかたを探るための組織として、10年以上にわたるその準備を終え、1996年(平成8年)4月に設置され、同年10月に一般公開された。これは研究施設であり、文化施設であり、生涯学習施設であって、交流と情報のセンターとしてもまた機能するものである。

開館以来、琵琶湖博物館は、これまでの博物館像にとらわれず、将来の時代に見合った博物館のイメージを作り上げて、その整備を行ってきた。しかし、琵琶湖博物館の構想が生まれた1980年代に比べると、現在の博物館を取り巻く情勢や社会環境は大きく変化している。このような中で、なお社会の期待の一歩先を行く博物館として成長するために、2002年(平成14年)12月には「『地域だれでも・どこでも博物館』をめざして〜琵琶湖博物館中長期目標〜」を、2005年(平成17年)3月には「琵琶湖博物館中長期基本計画『地域だれでも・どこでも博物館』を実現するために」を策定し、人びととともに「湖と人間」の新しい共存関係を築いていくことをめざしている。

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